第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

一般口演1-24(I-OR124)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

2016年7月6日(水) 14:35 〜 15:55 第F会場 (シンシア サウス)

座長:
中山 智孝(東邦大学医療センター大森病院 小児科)
稀代 雅彦(順天堂大学医学部 小児科・思春期科学教室)

I-OR124-01~I-OR124-08

14:35 〜 15:55

[I-OR124-08] マシテンタンは肺血管新生内膜線維性閉塞病変を予防する:Sugen/Hypoxia肺高血圧ラットモデルでの検討

篠原 務1, 澤田 博文2, 大槻 祥一郎2, 淀谷 典子2, 大橋 啓之2, 犬飼 幸子1, 加藤 太一3, 丸山 一男4, 新保 秀人5, 駒田 美弘2, 三谷 義英2 (1.名古屋市立大学大学院 新生児・小児医学分野, 2.三重大学大学院医学系研究科 小児科学, 3.名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学, 4.三重大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療学, 5.三重大学大学院医学系研究科 胸部心臓血管外科学)

キーワード:肺高血圧、線維性閉塞血管、マシテンタン

【目的】エンドセリン受容体拮抗薬マシテンタンがSugen/Hypoxia肺高血圧(PH)ラットの肺血管線維性閉塞病変を予防できるかを検討した。【方法】PHラットはSugen5416(20mg/kg)単回皮下注射後、3週間の低酸素暴露を行い、以後は大気中で飼育し作成した。Sugen5416投与後5~8週の間、連日マシテンタン (30mg/kg/日)を胃管投与し治療した。治療終了後に心カテ、右室肥大、肺血管病理、肺組織の遺伝子発現を検討した。研究対象は、治療直前PH群、マシテンタン治療PH群、無治療PH群、正常対照群の4群(n=38)。統計解析はANOVA+Tukey多重比較ないしPearson相関係数を用いp<0.05を有意差ありとした。【結果】肺切片直径50μm 以下の全血管に対する新生内膜線維性閉塞病変の発現率は、治療直前PH群0.5±0.3%、無治療PH群5.5±2.1%(p<0.05 vs治療直前PH群)、マシテンタン治療PH群0.5±0.2%(p<0.05 vs無治療PH群)。閉塞血管面積に対する新生内膜の線維化面積率は、治療直前PH群6.1±0.9%、無治療PH群14.9±0.5%(p<0.05 vs治療直前PH群)、マシテンタン治療PH群6.1±1.1%(p<0.05 vs無治療PH群)であり、線維性閉塞病変発現率と線維化面積率ともに、有意にその予防効果を認めた。新生内膜線維性閉塞病変の発現は、右室収縮期圧(r=0.420、p=0.009)、右室肥大(r=0.504、p=0.001)、閉塞血管出現率(r=0.499、p=0.001)と相関関係を示した。肺組織の遺伝子発現はCollagen1a1において正常対照群に対する比率が、無治療PH群1.44±0.1 (p<0.05 vs正常対照群)、マシテンタン治療PH群1.42±0.1%(p<0.05 vs正常対照群)であり、無治療PH群とマシテンタン治療PH群に有意差はなかった。Fibronectin1は無治療PH群1.48±0.08 (p<0.05 vs正常対照群)、マシテンタン治療PH群1.13±0.06 (p<0.05 vs 無治療PH群)でありマシテンタン治療により有意に減少した。【結論】マシテンタン治療により肺高血圧ラットの新生内膜線維性閉塞病変を予防した。