第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション7(I-PD07)
小児循環器領域の集中治療

2016年7月6日(水) 16:45 〜 18:15 第E会場 (シンシア ノース)

座長:
黒嵜 健一(国立循環器病研究センター 小児循環器集中治療室)
大崎 真樹(静岡県立こども病院 循環器集中治療科)

I-PD07-01~I-PD07-04

16:45 〜 18:15

[I-PD07-02] 先天性心疾患小児の心不全における非挿管呼吸管理 ~ハイフロー療法の役割~

竹内 宗之, 京極 都, 橘 一也 (大阪府立母子保健総合医療センター 集中治療科)

 先天性心疾患(CHD)小児の心不全においては、呼吸管理は重要な治療手段の一つである。人工呼吸中であれば、自発呼吸や胸腔内圧、肺容量の制御は比較的容易であるが、非挿管状態の小児では呼吸補助手段が限られているため容易ではない。ハイフロー療法(HFNC)は小児の急性呼吸不全において挿管を減少させることが示唆されているが、先天性心疾患の非挿管呼吸管理に関してはどのように活用できるだろうか?
自発呼吸による胸腔内圧の低下は、左心(体心室)不全においては、左心系の後負荷を増大することから害となる。また、左右短絡がある場合には、胸腔内圧の低下は、肺血流を不必要に増大する可能性がある。さらに、左心不全による肺水腫や、無気肺などにより、呼吸努力が増大すると、胸腔内圧の低下は著しくなり、横隔膜への血流の増加が起こり、心負荷は増大する。HFNCは、軽度のCPAP効果を持ち、死腔減少や流量サポート効果による呼吸仕事の減少効果を持つため、左心不全症例には有効であると考えられる。
右心不全または肺高血圧症例に対してのHFNCは、どう作用するのだろうか?前述のCPAP効果のために、自発呼吸と比較すれば右心系の前負荷を減少してしまう可能性がある。しかし、HFNCにより呼吸仕事量は減少するし、肺容量を適正化することにより肺血管抵抗を減少できるかもしれない。
また、CHDでは厳密な酸素濃度の投与が必要な場合が多い。通常の鼻カヌラでは吸入酸素濃度は制御できないが、HFNCでは吸入酸素濃度を調整することが可能になる。窒素やNOも、HFNCを用いれば非挿管患者にも安定した濃度を供給することができる。当センターでは肺血管抵抗の高いFONTAN手術後症例では、HFNCを利用してNOを投与しながら抜管を行うこともある。ただし、環境NO2への配慮や、酸素濃度の測定などには十分注意すべきである。
このように、先天性心疾患小児ならではの問題点に関しても、HFNCは有効であると考える。