第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム1(I-S01)
Berlin Heart導入後の小児重症心不全治療と心臓移植

2016年7月6日(水) 08:40 〜 10:10 第A会場 (天空 A)

座長:
福嶌 教偉(国立循環器病研究センター 移植医療部)
鈴木 孝明(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓外科)

I-S01-01~I-S01-07

08:40 〜 10:10

[I-S01-06] 重症心不全小児患者及び同胞に対する心理的支援~心臓移植待機中から心臓移植後まで~

馬戸 史子 (大阪大学医学部附属病院 小児医療センター)

抄録本文:
小児心臓移植施設である当院では、臓器移植法が改正された2010年より、小児心臓移植チームによる多職種連携支援が実施されている。チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS:治癒的遊び・心理的プリパレイション等、治療経過に添った心理面の治癒的介入を通して患児と家族に心理社会的ケアを行う医療専門職)も、その一員として、チーム医療の中で、患児・家族の心理社会的ニーズに応じた支援に取り組んでいる。重症心不全治療・心臓移植に伴う患児・家族の心理的課題は、確実な見通しやゴールの見えない不安、治療や療養上の制限に伴う苦痛、家庭環境・生活環境の変化に因るストレス、命に関わる急変の恐怖、アイデンティティや命の意味を問う哲学的葛藤、長期的影響や社会的反応を想定した懸念等、多様である。同時に、子ども達は、医療的ニーズを伴う状況下でも、“患児/患児の同胞”としてではなく“子ども”としての生活・成長・自己実現の機会を必要とし、医療体験に対しても、単に情報を得て状況を理解・受容することではなく、可能な範囲の見通しとコントロール感、希望と安心感を得て主体的に対処する方法を必要としている。その為、個々の発達段階・治療過程・心理状態・生活環境等の変化に沿って、子どもらしく成長しながら治療を乗り越えてゆく過程を支える段階的支援に取り組んでいる。また、国内に小児心臓移植施設が限られているため、地域を離れて移植待機期間を過ごし、移植後に地域に戻る患児・家族の移行に伴う心理社会的負担を考慮して、心理的支援においても、随時的・長期的ニーズに応じた架け橋的援助、待機期間から移植後まで含めた継続的支援が必要である。本発表では、他職種と連携したCLSの取り組みの中から、体外式VAD(Berlin Heart)を装着し院内で移植待機する患児の同胞、埋込型VADを装着し院外で移植待機する患児本人に対する支援を中心に、心臓移植後を含めた心理的支援について紹介したい。