第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

心不全・心移植

一般口演1-17(II-OR117)
心不全・心移植

2016年7月7日(木) 10:50 〜 11:40 第C会場 (オーロラ ウェスト)

座長:
朴 仁三(東京女子医科大学心臓病センター 循環器小児科)

II-OR117-01~II-OR117-04

10:50 〜 11:40

[II-OR117-02] 小児重症心不全に対する植込型補助人工心臓導入の挑戦

奥田 直樹1, 上野 高義1, 平 将生1, 小澤 秀登1, 金谷 知潤1, 松長 由里子1, 戸田 宏一1, 倉谷 徹1, 小垣 滋豊2, 澤 芳樹1 (1.大阪大学医学部 心臓血管外科, 2.大阪大学医学部 小児科)

キーワード:植込型補助人工心臓、小児心不全、患児の就学

【背景】小児に導入可能な左室補助人工心臓(LVAD)はデバイスの選択肢が少なく、体外式LVADが用いられていることが多い。しかし、成長、発達に重要な期間である乳幼児期、学童期に入院生活を余儀なくされている。近年、比較的小型の植込型LVADが登場し、当院では積極的にこれら植込型LVADを装着することで、自宅退院、通学可能とし、患児の社会的発達を目指してきた。しかし、小児における植込型LVADの成績や問題点に関しては報告が少なく明らかでない。【目的】小児における植込型補助人工心臓治療の成績および合併症を検討すること。【対象・方法】当院で植込型LVAD装着を行った8例。年齢中央値12.5[範囲:11-14]歳、BSA 1.26[0.8-1.4]m2。診断は拡張型心筋症3例、拘束型心筋症2例、肥大型心筋症1例、心筋炎2例。使用したデバイスはJarvik2000 4例、HVAD 3例、EVAHEART 1例。デバイス選択の基準として、HVADはBSA 0.8m2以上、Jarvik2000はBSA1.0m2以上とした。全例、左心脱血、上行送血とした。術後抗凝固療法はPT-INR 2.5-3.0を目標とし、アスピリン、ジピリダモールを併用した。【結果】LVAD補助期間は442[161-1035]日であった。手術死亡なし。遠隔期死亡は1例、術後195日に脳出血にて死亡した。3例が心移植に到達し、4例は移植待機中。合併症として、脳血管障害を4例、ドライブライン感染が3例。脳以外の臓器出血(消化管出血、性器出血、卵巣出血)は2例に延べ5回あった。全例退院し、通学可能であった。補助期間のうち外来観察期間の比率は49.4%で、延べ17回の緊急入院を要し、外来にて緊急頭部CTを延べ11回施行した。人為的操作ミスによるLVAD停止は2回あった。【結語】植込型LVADを積極的に導入し、学童期においても全例通学可能であった。しかしデバイス関連合併症の発生頻度は高く、中でも脳合併症は致命的となり得るため、症状出現時は速やかに精査する必要がある。