第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム13(II-S13)
小児循環器領域の遺伝子医学の革新

2016年7月7日(木) 15:00 〜 16:30 第B会場 (天空 センター)

座長:
山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)
横山 詩子(横浜市立大学医学部 循環制御医学)

II-S13-01~II-S13-05

15:00 〜 16:30

[II-S13-02] 小児科領域における遺伝子診断の臨床応用の展望

小崎 健次郎 (慶應義塾大学 医学部臨床遺伝学センター)

講演では、小児科領域の遺伝学的検査について、現況と展望を概観する。三次医療機関であっても多くの患者が「診断不明Undiagnosed diseases」として経過を観察されている。患者の相当数が、単一遺伝子の変異により発症していると推測され、網羅的な遺伝学的検査の臨床現場への導入が待たれる。病因診断により、特有な治療法の実施・合併症の回避、正確な遺伝カウンセリングが期待できる。「未診断疾患患者」に対して、網羅的遺伝子診断を行い、鑑別疾患・絞り込み・確定診断を行う試みが国際的に広がっている。わが国では、Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases (IRUD)が昨年の7月に開始された。われわれが同定した新規疾患のCDC42異常症(MIM 616737 Takenouchi-Kosaki syndrome)や、過成長症候群(MIM 616592 Kosaki Overgrowth syndrome)を含め、紹介したい。
Trio exome解析は有効ではあるが、コストは数十万円のオーダーとなり医療経済学的には臨床現場への導入にはそぐわない。解決策として、発端者のみの既知ヒト疾患原因遺伝子約5000のタンパク翻訳領域のみを対象として絞ったsingleton medical exome解析が期待される。演者施設での取り組みについて紹介する。
近年、難病研究に対して、国家的な研究支援が行われ、指定難病が302疾患に増加した。その過半は単一遺伝子疾患であることから、遺伝学的検査に対する潜在的な需要が高まった。singleton medical exome解析の考え方は、指定難病の遺伝学的検査にも適用可能である。今後の課題は、網羅的な遺伝子診断により見出される、二次的所見(偶発的所見)にどのように対応するか、わが国としてのコンセンサスを醸成することである。

1989年 慶應義塾大学医学部卒業、同小児科学教室入局
1993年 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学(小児科・遺伝科clinical fellow)
1997年 米国ベーラー医科大学に留学(分子生物学Research Fellow)
1999年 慶應義塾大学医学部 小児科専任講師
2003年 小児科助教授
2011年 臨床遺伝学センター教授 現在に至る
2012年より日本小児遺伝学会理事長
米国人類遺伝学会臨床遺伝学専門医