The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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パネルディスカッション

パネルディスカッション3(III-PD03)
左心低形成症候群:現状把握から今後を見据える

Fri. Jul 8, 2016 8:45 AM - 10:15 AM 第B会場 (天空 センター)

座長:
坂本 喜三郎(静岡県立こども病院 心臓血管外科)
宮地 鑑(北里大学医学部 心臓血管外科学)

III-PD03-01~III-PD03-05

8:45 AM - 10:15 AM

[III-PD03-04] 両側肺動脈絞扼術,動脈管ステント留置,Norwood手術が,脳循環,冠循環,心収縮に与える影響

栗嶋 クララ, 齋木 宏文, 桑田 聖子, 簗 明子, 岩本 洋一, 石戸 博隆, 増谷 聡, 先崎 秀明 (埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器部門)

【背景】HLHSに対するStage I 手術の生存率の向上に伴い,長期予後を見据えた治療戦略の構築が重要な課題である.我々は,Stage I 手術としての両側肺動脈絞扼術(bPAB)+/-動脈管ステント,Norwood手術の,脳・冠循環,心室機能への影響を調べ,発達,心機能保持の点からHLHS手術Strategyの最適化を考察した.
【方法】Stage I 手術を施行したHLHS29例において,超音波による脳血流,心カテによる上半身と下半身の酸素需給バランス比(OBI),心内膜下虚血の評価としてsubendocardial viability ratio (SEVR)を算出した.
【結果】術前から低値を示すHLHS患者の脳血流はbPAB後も改善がなく,bPABのOBIは Norwoodに比し有意に低く(0.77 vs 1.17),bPAB患者の脳血流障害を示唆した.更にNorwoodと異なり,bPAB患者のOBIは術後経時的に悪化した.また,bPABでは心拍出量増加時の血流は主に下半身に分配され(OBI=-0.07*体血+1.1, r=0.7),肺血流増加時には脳血流低下へ働き,血行動態変動時の脳血流の不安定さを示した.bPABにおいて動脈管をPGE1で維持した群とステント群の比較では,ステント群で有意な後負荷増大と心拍出量低下を認めた(p<0.01).またSEVR(0.77 vs 0.57),OBI (0.87 vs 0.71)共にステント群で有意に低値を示し,脳,冠動脈血流の減少が示唆された.一方,脳,冠循環においてbPABに対し優越性を示すNorwoodでも,正常二心室疾患,肺循環がBT短絡依存の疾患に比し,SEVRは有意に低値を示し,SEVR 0.52以下の場合,76%の確率でStage II手術前までの予後不良を予測した.
【結論】1)bPABはハイリスク症例のみに限定されるべきで,その場合stage II手術までの期間は可能な限り短期が良いこと,2)動脈管ステントは避けるべきであること, 3)血流動態的に最小限のImpedanceをつくる大動脈再建が心室機能を維持する鍵であり,後負荷軽減と心筋酸素消費軽減を目指す内科治療は,術後予後改善に役立つ可能性がある.