8:40 AM - 10:10 AM
[III-PD05-04] 心筋炎の基礎を臨床でどのように活かすか
【抄録】
心筋炎は心筋の急性または慢性の炎症性疾患で,無症状例から血行動態の破綻を来し致死的な経過をたどる劇症型まで,その臨床像は実に多彩である.原因も感染性,膠原病性,川崎病に伴うもの,薬剤性など様々であるが,多くはウイルス感染によるものと考えられている.診断のための臨床検査として,血液生化学検査では心筋障害マーカーの上昇を認め,特に心筋トロポニンの感度が高い.またその異常高値の持続は劇症化の兆候を示唆し,臨床上の有用性が高い.心電図ではST異常が高頻度にみられ,ST上昇は心膜炎合併による.心臓MRIではガドリニウムの遅延造影で炎症部位に一致したT2強調画像の高信号を示しその有用性が報告されている.核医学検査ではガリウム心筋シンチグラフィが炎症の検出には特異性が高いとされるが感度は低い.心内膜心筋生検で炎症細胞浸潤,心筋細胞の断裂・融解・消失,間質の浮腫・線維化が検出されれば診断は確定する.細胞外マトリックス蛋白の一つであるテネイシンCは心筋炎活動期に一過性に発現し,炎症細胞浸潤よりも早期に,広範囲に沈着するため,鋭敏な炎症マーカーとして期待される.さらにリンパ球性,好酸球性,巨細胞性などの組織診断は,免疫抑制療法を積極的に考慮すべきか否かといった治療方針を決定するうえで非常に重要である.しかしその重要性が高い急性期早期に重症小児例の心筋生検を行うことは,現実的には困難な場合が多い.急性期を過ぎてもじゅうぶんな機能回復が得られない例では,心筋炎の遷延,慢性化を考慮する必要がある.このような場合,我々は積極的に心筋生検を行い,治療方針を再検討している.慢性心筋炎は数ヵ月以上持続する心筋炎と定義されるが,拡張型心筋症と臨床診断された中にも少なからず存在することが示されている.状態の許す限り心筋生検を行い,両者の鑑別診断を行うことは臨床的意義が大きいであろう.
心筋炎は心筋の急性または慢性の炎症性疾患で,無症状例から血行動態の破綻を来し致死的な経過をたどる劇症型まで,その臨床像は実に多彩である.原因も感染性,膠原病性,川崎病に伴うもの,薬剤性など様々であるが,多くはウイルス感染によるものと考えられている.診断のための臨床検査として,血液生化学検査では心筋障害マーカーの上昇を認め,特に心筋トロポニンの感度が高い.またその異常高値の持続は劇症化の兆候を示唆し,臨床上の有用性が高い.心電図ではST異常が高頻度にみられ,ST上昇は心膜炎合併による.心臓MRIではガドリニウムの遅延造影で炎症部位に一致したT2強調画像の高信号を示しその有用性が報告されている.核医学検査ではガリウム心筋シンチグラフィが炎症の検出には特異性が高いとされるが感度は低い.心内膜心筋生検で炎症細胞浸潤,心筋細胞の断裂・融解・消失,間質の浮腫・線維化が検出されれば診断は確定する.細胞外マトリックス蛋白の一つであるテネイシンCは心筋炎活動期に一過性に発現し,炎症細胞浸潤よりも早期に,広範囲に沈着するため,鋭敏な炎症マーカーとして期待される.さらにリンパ球性,好酸球性,巨細胞性などの組織診断は,免疫抑制療法を積極的に考慮すべきか否かといった治療方針を決定するうえで非常に重要である.しかしその重要性が高い急性期早期に重症小児例の心筋生検を行うことは,現実的には困難な場合が多い.急性期を過ぎてもじゅうぶんな機能回復が得られない例では,心筋炎の遷延,慢性化を考慮する必要がある.このような場合,我々は積極的に心筋生検を行い,治療方針を再検討している.慢性心筋炎は数ヵ月以上持続する心筋炎と定義されるが,拡張型心筋症と臨床診断された中にも少なからず存在することが示されている.状態の許す限り心筋生検を行い,両者の鑑別診断を行うことは臨床的意義が大きいであろう.