The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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市民公開講座

市民公開講座(LOP)
心疾患患者の社会的自立を目指して - 小児から成人への移行期の諸問題を考える -

Fri. Jul 8, 2016 3:00 PM - 5:30 PM 第C会場 (オーロラ ウェスト)

座長:
西畠 信(鹿児島生協病院 小児科)
星合 美奈子(山梨大学医学部 新生児集中治療部)

LOP-00~LOP-06

3:00 PM - 5:30 PM

[LOP-04] 自立に必要な社会制度(公的補助・制度の解説と問題点)
生活保障に関連した支援制度(身体障碍者認定、年金・生活保障)

西畠 信 (鹿児島生協病院 小児科)

社会保障での立場も18歳(もしくは20歳)を境に大きく変わるので疾病と共に社会で自立していくには普通の「巣立ち」の準備以外の準備が必要です。一方、社会保障制度の仕組みも新たな法律や法改正で最近大きく変更されつつあります。生活に重要な支援制度のうち「手帳」と所得保障について現状と問題点を取り上げます。
1.身体障害者手帳・その他の手帳
身障手帳の有無と等級は大切で、受けられる支援内容が大きく変わります。心疾患で取得できるのは身障1、3、4級で、医療費助成を始めサービスは級によって異なります。重症心疾患は乳児期から申請可能ですが、3歳過ぎに見直しがあります。身障手帳取得状況は厳しくなっており、以前は1級が認められた状態でも最近は3~4級が精一杯のことが多くなりました。
等級は診断書の症状や検査所見の項目の〇の数が重要な参考とされていますが、先天性心疾患に関しては項目の内容が重症度を判断するのに適切とは言えない上に、判定基準や判断が自治体によって異なることもあるため、今後の改善が望まれます。
手術やカテ治療の費用は18歳未満では育成医療の対象でしたが、18歳以上では更生医療の対象になります。更生医療だけでなく身体障害者枠での就労を目指す場合も身障手帳所持は必須ですので移行期の準備として確認が必要です。知的障害、発達障害、精神障害を伴うときにはあわせて療育手帳や精神保健福祉手帳の取得も考える必要があります。
2.生活の保障
医療を受けながら社会生活するには生活(所得)保障も重要です。中等度以上の心疾患の患者は20歳未満では特別児童扶養手当(1級と2級)と障害児福祉手当の対象となっていました。18歳未満で発症した心疾患の患者は成人すると障害基礎年金の対象となります。障害基礎年金は1級と2級に分かれており、取得には特別児童扶養手当の診断書と類似の医師の診断書が根拠となります。生活状況の程度がおおよその目安となりますが、(アからオの5段階のうち概ね「オ」が1級、「ウ~エ」が2級の対象になる厳しい判定基準)、心疾患の患者で就労できている方はほとんどが対象になりにくいのが現状です。限られた予算の中で分け合いますので、既に障害基礎年金を受給している方も更新のため医師の診断書の提出が必要なことがあり、公正な配分が為されるように考えるべきと思われます。
これらの移行期に必要な社会の仕組みの知識は、医師もよく知らないというのが正直なところです。地方(自治体)による違いと共に主治医による違いがあるのも現実で、今後、学会としての対応と教育も重要です。