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[P10-02] 中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症に合併した心室頻拍は相対的心筋虚血により生じる。
Keywords:中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、心室頻拍、虚血
【背景】脂肪酸代謝異常症の一つである中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD deficiency)は、新生児期における突然死の原因として知られている。また、MCAD deficiencyでは、心室頻拍VT、心室細動VFを呈した症例の報告が散見されるが、その機序は不明である。【症例】症例はアメリカ国籍男児、妊娠経過に異常は認めず、39週3200gにて出生。3生日BDに哺乳不良、傾眠傾向認め前医受診。低体温、頻呼吸、低血糖を来し、septic shockの疑いで4BDに当院搬送。体重減少、肺出血、肺高血圧、高度のアシドーシスを認めた。鎮静挿管、透析治療等の集学的治療を開始した。マススクリーニングの結果からMCAD deficiencyと診断(遺伝子型は985 A>G (homozygous))し、血糖を高めに維持しカルチニンなど代謝異常に対する治療を開始した。エコー上心室機能は比較的保持されていたが、ECG上、ST-T変化をきたした後、VTを認め、VFにdegenerationした。同様のエピソードを2回認めDCカウンターショックで洞調律に復帰した。この際、肺高血圧の増悪はない。心室中隔の肥大と輝度亢進の所見が認められ、ST-T変化を伴うため、心室筋の相対的虚血による心室機能低下、および、心室性不整脈を生じたと考えられた。Lidocaine持続投与の開始により心室性不整脈の再発は予防できた。その後の経過で肺高血圧症が改善し全身状態安定したため、米国に転院となった。【考察】この症例では、心室性不整脈直前に心電図上ST-T変化が確認できた。従って、MCADにおけるVT/VFは、いわゆる、急性冠動脈疾患による心室性不整脈に類似して、脂肪酸代謝異常による心室筋の相対的虚血によりが生じたと推測した。