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[P30-02] ダプトマイシン投与と持続陰圧吸引療法が奏功した開心術後MRSA縦隔炎の1乳児例
Keywords:ダプトマイシン、MRSA、縦隔炎
【背景】ダプトマイシン(DAP)は新規の環状リポペプチド系抗菌薬で,グラム陽性 球菌に対し広く抗菌活性を有し,早期の殺菌性とバイオフィルム透過性を特徴とする 抗MRSA薬である.小児ではその安全性が確認されていないこと等から,小児に対する DAPの使用報告はほとんどない. 【目的】DAP投与と持続陰圧吸引療法が奏功した開 心術後MRSA縦隔炎の乳児例を報告する.【症例】女児.大動脈縮窄,心室中隔欠損, 動脈管開存,肺高血圧,低出生体重児(出生体重2092g)と診断され当科入院.4か 月時に大動脈弓再建術,心室中隔欠損閉鎖術,両側肺動脈絞扼解除術を施行.術後9 日目に発熱出現,中心静脈カテーテル先端及び血液培養でMRSAが検出され,塩酸バンコマ イシンを投与.術後14日目,術創の発赤腫脹出現,CT検査で前縦隔,上行大動脈周 囲に被包化された液体貯留が認められ,縦隔炎と診断.切開排膿,デブリドマン行 い,持続陰圧吸引療法開始し,抗生剤をDAPに変更.術後35日目,炎症所見は鎮静化 し,縦隔組織からMRSA検出されず創閉鎖.術後52日目,MIC値を参考にDAPを linezolidに変更,術後65日目に抗菌療法終了.術後74日目に退院.【考察】DAP は 腎臓への安全性が高く,治療薬物モニタリングは不要とされる. 小児に対する使用で 有害事象を認めなかったとする報告も散見されるが,DAP には骨格筋への影響が知ら れており,濃度依存性にCPK上昇が出現するため,CPK上昇には十分留意して使用する ことが望まれる.小児に対するDAPの使用は,初期治療薬が有害事象のため継続が困 難である場合の代替薬として,あるいは本症例のようなバイオフィルムを形成してい る病変に対する使用等が,現時点では適切であると考える.症例を蓄積することで小 児における適応の確立,投与量,有効性,副作用等の検討が望まれる.