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[P38-01] HFpEF (heart failure with preserved ejection fraction)における心臓内幹細胞移植の治療効果と機序解明
キーワード:細胞治療、HFpEF、単心室症
【背景】収縮能の保たれた心不全(HFpEF: heart failure with preserved ejection fraction) は予後不良とされているが、単心室症におけるHFpEFの報告はない。我々は小児単心室症に対する心臓内幹細胞自家移植療法の有効性を報告してきたが、HFpEFでの反応性は不明である。【目的】ラット右心負荷モデルならびに単心室症患者において、HFpEFでの細胞移植の治療有効性を明らかにする。【方法】4週ラットに対する肺動脈絞扼術 (PAB)を右心負荷モデルとし、1ヶ月後のカテーテル検査からHFpEF群(RVEF≧40%)とHFrEF群(RVEF<40%)に分類、さらに43名の単心室症患者に対しても心臓MRIのEF値40%を基準に2群に分け、それぞれの特性と細胞治療後の変化を比較検討した。【結果】ラットPAB後1ヶ月(n=49) のHFrEF群(n=28)とHFpEF 群(n=21)での検討から、HFpEF群はHFrEF群に比べ心室容量が有意に小さく(P<0.01)、real time RT-PCRによる検討では、両群ともCOL1/3やMMP2/9などの線維化マーカーが著明に亢進し、特にHFpEF群はHFrEF群に比べて心不全マーカーであるNPPAの発現が高かった(p=0.02)。治療反応性の検討では、medium投与では両群ともEFに変化は見られなかったが、細胞投与したHFrEF群は1ヶ月後に有意なEF改善を認めるものの (P=0.02)、HFpEF群では変化がなかった。心腔内圧測定により、細胞治療を行った両群とも心筋弾性能及び収縮効率を示すelastanceとEa/Eesの改善が見られた(P=0.02)。一方臨床的には、単心室症症例でのHFrEF群(n=30)はHFpEF群(n=13)に比べ、細胞治療1年後での心室容量及び心筋重量は縮小し、かつEFの改善が見られた(P<0.01)。HFpEF群では細胞治療によるEF改善効果はないものの、Ea/Eesの改善やBNP値の低下を認めた(P=0.03)。【結論】ラット及びヒトでの検討により、HFpEFはHFrEFに比べて細胞治療による心機能の改善効果は乏しいものの、心筋弾性能の改善による心室リモデリング抑制効果が示唆された。