第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

術後遠隔期・合併症・発達3

ポスターセッション(P43)
術後遠隔期・合併症・発達3

2016年7月8日(金) 13:50 〜 14:40 ポスター会場 (天空 ノース)

座長:
赤尾 見春(日本医科大学武蔵小杉病院 小児科)

P43-01~P43-06

13:50 〜 14:40

[P43-01] フォンタン型手術後の蛋白漏出性胃腸症に対し,スピロノラクトン,肺血管拡張薬,アンギオテンシン変換酵素阻害薬に加え,β遮断薬を導入し寛解を得た1例

辻岡 孝郎1, 信田 大喜子1, 鎌田 晃嘉1, 内田 雅也1, 上野 倫彦1, 谷口 宏太2, 佐々木 理2, 泉 岳2, 武井 黄太2, 山澤 弘州2, 武田 充人2 (1.日鋼記念病院 小児科, 2.北海道大学病院 小児科)

キーワード:フォンタン型手術、蛋白漏出性胃腸症、β遮断薬

【背景】フォンタン型手術後の長期生存率は改善しているが,遠隔期における合併症の1つに蛋白漏出性胃腸症(PLE)がある.PLEは時に難治性で予後不良因子となるが,根本的な病態や治療は確立されていない.今回我々は,フォンタン型手術後にPLEを発症したが,β遮断薬を含む複数の内服治療で寛解を維持できている1例を報告する.【症例】3歳,男児.完全型房室中隔欠損症,左室・大動脈低形成,大動脈弁狭窄に対して,Norwood手術,両方向性Glenn手術を経て2歳時にフォンタン型手術(EC-TCPC)を行った.経過は良好であったが,術後11か月時の血液検査で低蛋白血症を認め,99mTcヒトアルブミンシンチグラフィでPLEと診断した.心臓カテーテル検査では,中心静脈圧 11mmHg,肺血管抵抗 1.6U/m2,心係数 2.8L/min・m2,心室拡張末期圧 5mmHgと血行動態指標は良好であった.ヘパリン持続静注によって低蛋白血症は改善し,シルデナフィルとシラザプリルの内服に加えスピロノラクトン大量療法(4.4mg/kg/day)を開始した.この時点でヘパリン持続静注を終了したところ低蛋白血症が再燃し離脱できなかった.そのためカルベジロールを0.04mg/kg/dayから漸増し,0.35mg/kg/dayで継続した.以後はヘパリン持続静注を終了しても低蛋白血症の再燃なく,4か月間以上にわたりPLEは寛解している.【考察】フォンタン型手術後のPLEに対して,アンギオテンシン変換酵素阻害薬やβ遮断薬などの併用にて改善したという症例報告は学会で散見される.本症例においても,シルデナフィル,シラザプリル,スピロノラクトン大量療法に加えて,カルベジロールも併用することで,ステロイド投与や他の注射薬を要さずにPLEをコントロールできた.PLEに対するカルベジロールの有効性について明らかなエビデンスはないが,フォンタン型手術後の血行動態に対して何らかの好影響を及ぼし,症例によってはPLEに対しても有効である可能性が示唆される.