The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ポスターセッション

術後遠隔期・合併症・発達8

ポスターセッション(P48)
術後遠隔期・合併症・発達8

Thu. Jul 7, 2016 6:00 PM - 7:00 PM ポスター会場 (天空 ノース)

座長:
山村 健一郎(九州大学病院 小児科)

P48-01~P48-04

6:00 PM - 7:00 PM

[P48-02] 消化管出血は蛋白漏出性胃腸症の一つの症状となり得る

岩本 洋一, 増谷 聡, 桑田 聖子, 栗嶋 クララ, 石戸 博隆, 先崎 秀明 (埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器科)

Keywords:PLE、蛋白漏出性胃腸症、消化管出血

【背景】蛋白漏出性胃腸症(PLE)は予後と密接に関連したフォンタン術後遠隔期合併症である。PLEの児に消化管出血が合併した際、独立した二つの病態か、あるいはPLEの部分症状として消化管出血があり得るのか、定かではない。PLE・消化管出血合併例で、消化管出血がPLEの部分症状であると強く示唆する症例を報告する。
【症例】6歳男児。HLHS. フォンタン術後、三尖弁人工弁置換術、再置換術後。フォンタン術後のカテーテル検査ではCVP 21, PCWP 17, RVEDP 14, CI 4.0, Qp/Qs 0.73 (VV短絡あり), Rp 1.2unit m2と、右室拡張性低下と人工弁によるPCWP上昇のため、高いCVPであった。抗心不全療法に努め、外来通院中であったが、下痢を契機に活気不良となり、一時改善後に再度活気が低下(下痢はみられず)、血清アルブミン値(Alb)の漸減が認められた。Alb低下に遅れて貧血が出現し、ステロイド・鉄剤投与を開始したが、低蛋白血症・貧血が進行し、入院となった。次第に消化管出血が増悪し、明らかなタール便(便ヒトHb>1000)となった。便中α1アンチトリプシンクリアランスは90.6 ml/日と異常高値を示し、PLEと合致した。上下部内視鏡検査では線状胃炎と脆弱な十二指腸粘膜、軽度リンパ管拡張を認めた。ステロイド不応であったが、ドライな水分管理、十分なヘパリン、ワーファリン減量、栄養管理、安静等により徐々に安定化に向かい、消化管出血改善に伴いAlbは上昇した(2.0から3.6g/dl)。消化管出血再燃時にはAlbが再低下、出血改善に伴いAlbが再上昇した。
【考察】本児の消化管出血(便ヒトHb)と連動して血清Alb値が変動する経過は、消化管出血がPLEの部分症状であることを示唆する。消化管出血がPLEの部分症状であり得るとの認識は、消化管出血への治療選択にあたり非常に重要と思われる。今後多施設での症例の蓄積、組織を含めた検討による機序解明、および治療法構築が期待される。