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[P54-04] 初期3剤併用による肺高血圧治療に続き生体肝移植を行った高度肺高血圧を伴う先天性門脈体循環シャントの1例
Keywords:肺高血圧、肝移植、門脈体循環シャント
(背景)高度肺高血圧(PH)を伴う先天性門脈体循環シャント(CPSS)は、予後不良な疾患であり、門脈欠損例では、肝移植(LT)が行われるが、高度PH(平均肺動脈圧(mPAP)≧35mmHg)は、LTの危険因子とされ、PH治療は重要な課題である。種々のPH治療薬が投与可能な現在でも、本症は大部分の大規模臨床試験で対象から除外される稀な疾患であり、特殊性(肝機能障害、LT後免疫抑制剤併用)もあり、その治療法は確立していない(orphan disease)。今回、高度PH、門脈欠損を伴うCPSSに対して、初期3剤併用療法を先行して肝移植を施行したので、その効果を報告する。(症例)5歳女児。意識消失発作と右室圧上昇、肝腫瘍を認め、当科を紹介。画像検査で、門脈系から下大静脈へのシャントを認め、肝に限局性結節性過形成を認めた。Mn、胆汁酸、アンモニアが高値を示し、脳MRIでMn沈着を示唆する所見を認めた。心カテでは、mPAP 35mm Hg、Rp 6.03。CPSS閉塞テストでCPSS Type1(門脈欠損)と診断し、LTの適応と判断した。PH治療として、タダラフィル、マシテンタン、エポプロステノール(EPO)の初期3剤併用療法を先行した。PH治療開始後2ヶ月の心カテでは、mPAP 32mm Hg、Rp 3.87、治療開始後4か月には、mPAP 28mm Hg、Rp 3.33となり、治療開始後5か月にLTを行った。LT直後は、タクロリムス脳症のためシクロスポリンに変更を要したが、NO吸入、EPO持続静注を含む、3剤併用PH治療にて、PAHの増悪や副作用なく経過した。(結語)高度PHを伴うCPSSに対して、LTに先行し3剤初期併用療法を行い良好な経過を得た。短期間でのPH改善が課題であったが、免疫抑制剤やPH治療薬との相互作用による薬物動態変化、肝機能への影響、周術期の経静脈治療確保の点から安全かつ有効な治療法と考えた。症例登録により、本症に対するPH治療法の確立が重要と考えた。