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[P59-05] 単心室循環の血行動態に着目した経静脈的細胞投与による心筋再生医療の新たな可能性
Keywords:心筋幹細胞、単心室、ラット
【背景】我々は単心室症に対する心筋幹細胞cardiosphere-derived cell (CDC)の経冠動脈投与による心不全治療の効果を報告したが、経冠動脈投与はカテーテル操作を必要とするためより低侵襲な投与法の開発が望まれる。正常解剖ではCDCを経静脈投与すると肺で幹細胞が捕捉されるため十分に心筋へ生着しないと考えられているが、静脈血が左心系に直接流入する単心室症のような血行動態であれば、投与した細胞が肺で捕捉されることなく直接冠動脈に流入すると予想される。経静脈投与で心筋へのCDC生着が得られればより低侵襲に治療を行うことができ、反復投与も容易なため治療効果の増幅も期待できる。【目的】単心室循環におけるCDC経静脈投与後のCDCの心筋分布を検討すること。【方法】正常ラットに心房中隔欠損および心室中隔欠損を作製し、三尖弁直上で右心房を縫縮閉鎖することで、単心室循環を確立した。単心室モデルおよび正常ラットに1200万個/kgの鉄標識したCDCを上大静脈から投与し、10分後に心臓を摘出しホルマリンに浸漬した状態でex-vivo MRIを施行した。心臓を基部から心尖部まで8スライスに分けて撮影し、T1強調画像の低信号領域で鉄標識CDCの分布を評価した。さらに単心室モデルで血液ガス検査から肺体血流比を推定し、CDC分布量を比較した。MRI撮影後に標本を鉄染色し、鉄標識CDCの心筋への分布を確認した。【結果】正常ラットではMRIで低信号領域を全く認めなかったが、単心室モデルではすべての断面で低信号領域を認めた(P<0.01)。さらに鉄染色による観察から、MRIでの低信号領域は鉄標識CDCであることが確認できた。肺体血流比による分布の検討では、Qp/Qs≦1.0の群では低信号領域は心筋断面の面積の総和に対し平均12.5%であったのに対し、Qp/Qs>1.0の群では5.7%であった(P<0.01)。【結論】静脈血が直接左心系へ流入する単心室循環の場合、CDCの経静脈的投与による治療の可能性が示唆された。