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[P62-04] 当院で経験した経過の異なる冠動脈瘻の2例
キーワード:冠動脈瘻、心不全、抗血栓療法
【緒言】冠動脈瘻は冠動脈が心室や心房・大血管腔に接合する異常であり、頻度は全人口の0.002-0.8%, 全ての心奇形の0.2~0.4%にあたる. 当施設で経過の異なる冠動脈瘻の2例を経験した. 【症例】症例1) 2歳10か月男児, 在胎40週, 2520g, 新生児期特に問題なし. 1か月検診時に心雑音を認めたため当院心臓外来を受診した。胸部エコーで左冠動脈起始部に2.9mmの拡張, 末端の右肺動脈への流入を認めた. これまで症状を認めず, 左冠動脈の急激な拡大傾向も認めないため無加療で経過観察を継続している. 症例2) 1歳4か月男児, 在胎38週6日, 3101gで出生し, 出生当日に心雑音を認めたためNICUに入院した. チアノーゼは認めず, 左第2肋間外側にLevine3/6のsystolic murmurを聴取した. 胸部エコーで左冠動脈起始部4.5mm、前下行枝4.4mmと拡大を認め, 造影CTで左冠動脈と右室の交通を認め左冠動脈右室瘻と診断した. 出生直後は症状を認めなかったが, 生後6日目より心不全症状を認めたため, フロセミド・アルダクトンの内服を開始しNICUを退院した. しかし退院後に体重増加不良を認めたため, 生後3か月に冠動脈瘻閉鎖術を施行した. 術後経過は良好であるが, 血栓予防としてアスピリンとワーファリンの内服を現在も継続している. 【考察】大半の冠動脈瘻の症例は幼少期無症候であり偶発的に発見されることが多い. 当科で経験した2例はいずれも心雑音を契機に発見されたが, 症例1)はシャント量も少なく症状も認めないため経過観察のみでフォローしている一方で, 症例2)には豊富なシャント血流により肺高血圧, 心不全症状を認めたため, 乳児期に外科的な加療を必要とし, 現在も抗血栓療法を継続している. 冠動脈瘻は瘻血管の起始部位および開口部位には様々なタイプが存在し, また他の合併奇形も認めるため, 症例ごとの治療検討が不可欠である. また術後に拡大瘻血管の血栓化, 狭窄に対するフォローが必要となる.