第52回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

要望演題

不整脈のカテーテル治療

要望演題6(YB06)
不整脈のカテーテル治療

2016年7月7日(木) 15:00 〜 16:00 第D会場 (オーロラ イースト)

座長:
宮崎 文(国立循環器病研究センター 小児循環器科)
大橋 直樹(JCHO中京病院中京こどもハートセンター 小児循環器科)

YB06-01~YB06-06

15:00 〜 16:00

[YB06-03] 成長に伴う遅伝導路の発達と房室結節回帰性頻拍発症への関与

武野 亨, 中村 好秀, 上嶋 和史, 竹村 司 (近畿大学医学部 小児科)

キーワード:AVNRT、電気的相互作用、遅伝導路

背景:房室結節回帰性頻拍(atrioventricular nodal reentrant tachycardia; AVNRT)において、遅伝導路との電気的相互作用による速伝導路の不応期延長が発症機序の一因とされている。しかし小児では遅伝導路が未発達であり、この作用が成人と比較して弱くAVNRT発症が少ないと考えられる。今回我々は、ナビゲーションシステムの位置情報を用いて、遅伝導路の発達と電気的相互作用との関連を解析し、上記仮説の妥当性を検討した。方法:平成24年1月から平成26年12月の間に当科でカテーテル治療を行った基礎疾患のないAVNRT症例のうち、遅伝導路の完全離断成功例を解析対象とした。電極カテーテルを高位右房、His束、冠静脈洞、右室心尖部に留置して電気生理検査を施行した。AVNRTの確定診断後、CARTO3を用いてKoch三角周囲のvoltage mapを作成し、His領域から後中隔へ進展するlow voltage areaを描出した。通電はlow voltage areaの下方から開始し、通電が無効だった場合には、His束電位記録部位に向かって少しずつ上方へ通電部位を移動した。治療前後での速伝導路の不応期の比較を行い、その差をΔFP-ERPとした。さらに症例の体格と遅伝導路の長さ、ΔFP-ERPとの関係を解析した。結果:対象症例は全部で10例、年齢の中央値は11歳(範囲 5-18歳)、遅伝導路完全離断までに要した通電回数は中央値 4回(範囲 2-13回)だった。10例全例において、遅伝導路離断後に速伝導路の有効不応期の著明な短縮が認められた(435.0±85.9ms vs. 307.0±91.0ms、P<0.001)。体表面積(BSA)とHis電位記録部位-成功通電部位間距離(SP length)との間(r=0.641、P=0.046)、ΔFP-ERPとSP lengthとの間(r=0.750、P=0.013)にはそれぞれ強い正の相関を認めた。結論:成長による遅伝導路の発達に伴って、速遅伝導路間の電気的相互作用が強くなることが示唆された。これは加齢に伴うAVNRT発症頻度の増加を説明する、1つの要因と考えられた。