9:35 AM - 10:25 AM
[I-OR02-02] 右室拡張能の新しい評価方法 -減衰振動の運動力学方程式による評価-
Keywords:拡張能, 減衰振動, 右心室
【背景】時定数(Exponential, τE およびLogistic, τL)は弛緩能評価のGold standardと認識されている。しかし右室拡張期圧は緩やかに降下し、圧が低値となってからdP/dtの最小値(dP/dt_Min)を呈するため、dP/dt_Min以降の圧波形から算出されるτE, τLは右室弛緩能評価の指標として適切ではない。また、τE, τLは実測した左室圧に対する近似値であり、右室心筋の生理学的機能評価に則した指標ではない点も臨床応用には問題である。我々は右室圧を心室壁の伸縮によるElastic recoil/stiffnessと筋原繊維のCross-bridgingによる力とのバランスで形成されていると見なし、等容性拡張期の右室圧 P(t)を減衰振動の運動方程式 d2 P/dt2 + 1/μ dP/dt + Ek (P - P∞) = 0 (1/μ:減衰係数; Ek:ばね定数)に適用した。EkはElastic recoil/wall stiffness, 1/μはCross-bridging deactivation によるrelaxationを示す。【目的】減衰振動の運動方程式から算出されるEk(s-2), μ(ms)が右室弛緩能評価の有用な指標であるかを検証する。左室と比較した右室弛緩能の特徴を検討する。【方法】右室圧容量負荷を認めない25例(control群)と肺高血圧症6例(PH群)を対象とした。Levenberg-Marquardt法を用いて右室拡張期圧波形を上記方程式にfittingさせ、Ek, μを計測した。【結果】Control群の右室弛緩能は、Ek=657.9±162.2s-2, μ=44.5±15.2msであった。左室での正常値 (Ek=782.9±103.7, μ=22.8±6.3)と比較すると、Ekでは有意差はなく、μは有意な高値を示した(p<0.0001)。つまり右室ではcross-bridging deactivationよりもElastic recoilに伴う弛緩が優位であると示された。PH群ではControl群に比してEkが有意に高値(822.7±151.5, p<0.05) であったが、μは有意差を認めず(39.8±10.7)、右室stiffnessの増悪が示された。【結語】減衰振動を適用した解析は病態を反映し、右室弛緩能の評価に有用である。