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[I-OR02-03] 部位別拡張早期左室内圧較差の計測による乳児期から青年期の左室拡張能の発達評価
キーワード:左室拡張能, 部位別左室内圧較差, 心臓超音波
【背景】拡張早期に発生する左室の僧房弁から心尖部の圧較差は、拡張能のgold standardであるtau indexと相関し、血液を左房から左室へ吸引する力として左室拡張能の重要な役割を担っているが、小児における報告は存在しない。この圧較差はintraventricular pressure different(IVPD)と、IVPDを左室長径で除したintraventricular pressure gradient(IVPG)で表され、主に左房圧の影響を受けるbasal segmentと、能動的拡張能を担うmid to apical segment に分けて解析が可能となった。目的は、部位別IVPDとIVPGの評価により、乳児期から青年期の拡張能の発達の機序を明らかにすることである。【方法】120人の正常小児を、G1(0-2歳)、G2(3-5歳)、G3(6-8歳)、G4(9-11歳)、G5(12-16歳)に分類した。左室流入血流のカラーM mode画像をオイラーの方程式を用いて、total IVPD(TIVPD)、basal IVPD(BIVPD)及びmid-to-apical IVPD(MAIVPD)と、それぞれのIVPGを測定した。【結果】TIVPDはG1からG5にかけて上昇した(G1:1.75+0.50mmHg,G5:2.95+0.72mmHg,p<0.001)。これは、BIVPDが年齢による変化がなく、MAIVPDが加齢に伴い上昇した(G1:0.68+0.29mmHg,G5:1.53+0.40mmHg,p<0.001)ことによるものであった。また、TIVPGは年齢による変化は認めなかったが、MAIVPGはG1(0.16+0.07mmHg/cm)と比べてG5(0.21+0.06mmHg/cm)で大きかった(p<0.001)。TIVPDとMAIVPDは左室長径、左室拡張末期容積及び組織ドプラー法による僧帽弁輪運動速波形の拡張早期最大速度(e')の増加に有意な相関を示して増加した(全てp<0.001)。【結論】血液の能動的な吸引を担う乳頭筋部から心尖部の圧較差が、心臓のサイズの成長と左室弛緩能の発達に伴い増大する。この力は、左室長で補正しても乳児期よりも思春期の方が大きかった。一方左房圧の影響を受ける心基部の圧較差は、加齢に伴う変化は認めなかった。これらは小児の左室拡張能の発達に関する新たな知見である。