第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

心血管発生・基礎研究

一般口演 8 (I-OR08)
心血管発生・基礎研究

2017年7月7日(金) 09:35 〜 10:25 第5会場 (1F 展示イベントホール Room 5)

座長:南沢 享(東京慈恵会医科大学)

09:35 〜 10:25

[I-OR08-05] ドキソルビシン心筋症に対するミトコンドリアドラッグデリバリーシステムを用いた心筋前駆細胞移植の検討

阿部 二郎1, 山田 勇魔2, 武田 充人1, 原島 秀吉2 (1.北海道大学 医学部 小児科, 2.北海道大学 薬学研究院 薬剤分子設計学研究室)

キーワード:ミトコンドリアドラッグデリバリーシステム, 心筋幹細胞移植, ドキソルビシン心筋症

【背景】ドキソルビシン心筋症は代表的な薬剤性心筋症の1つであり、有効な治療法はない。多くのcancer survivorが社会復帰している時代において、アントラサイクリン系抗癌剤の心血管毒性は長期予後にも影響を及ぼし、治療法の開発は急務である。【目的】ドキソルビシン心筋症において細胞移植療法は有用であるが、心筋幹細胞はドキソルビシン耐性が低く、ミトコンドリア由来の酸化ストレスが増大した心筋組織内でも移植が成立する技術開発が求められる。【方法】心筋幹細胞ミトコンドリアに対して MITO-Porter systemによりレスベラトロールを選択的に送達し、MITO-Cellと命名した。細胞移植用のMITO-Cellを作製し、マウス心臓に移植した後、ドキソルビシン投与によって心筋ミトコンドリア傷害を起こし、MITO-Cellを含めた心筋幹細胞移植の効果を解析した。【結果】 MITO-Cell のミトコンドリア酵素活性と膜電位の有意な上昇を確認し、ドキソルビシン心筋症マウスモデルの生存率は、従来の心筋幹細胞移植法よりも有意に延長した(log-rank, P<0.05)。MITO-Cellを移植した心筋組織内では、ドキソルビシンの標的となるミトコンドリア新生関連遺伝子やOXPHOS関連遺伝子の発現が保たれていることがわかり、呼吸鎖酵素複合体タンパク質レベルも保持されていた。【考察】心筋ミトコンドリア新生と電子伝達系の維持がMITO-Cell移植の生存率への寄与に影響していることが示唆された。MITO-Porter systemを用いてミトコンドリア保護分子を幹細胞に送達することは、重症心不全に対する幹細胞移植療法の有効性を高める可能性がある。【結論】MITO-Cell移植療法は、広範な酸化ストレスを主座とするドキソルビシン心筋症に対する画期的な細胞移植療法に発展する可能性がある。