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[I-OR16-03] 自己心膜を用いた弁葉拡大:完全型房室中隔欠損修復に対する応用の経験
Keywords:房室中隔欠損, 弁葉拡大, 弁形成
【はじめに】自己心膜片による弁葉拡大は成人例に比べ小児例での経験の報告は稀である。完全型房室中隔欠損修復術における本術式を2例で経験し、いずれも良好な結果を得た。【症例と手術】症例1:4歳9か月女児(体重13.0kg)、乳児期完全型房室中隔欠損修復時に逆流制御のためAlfieri法を用いた後経過観察中に進行性僧帽弁狭窄となったため、Alfieri縫合解除に加えglutaraldehyde処理自己心膜片にて裂隙縫合閉鎖後の共通前・後尖複合の弁葉拡大を行った。術後6年の経過では僧帽弁*流入速度(E/A波)1.45/1.20m/s、逆流軽度が維持され、運動制限なく、良好な身体発育(体重30.8kgへ)も得られている。症例2:3歳女児(体重10.0kg)、Down症候群に伴う内臓逆位、完全型房室中隔欠損に対し、肺動脈絞扼術を介したTwo-patch法による二期的修復を行った。術中試験で共通前尖(左室部分)の可動性・挙上不良のため弁口全体から高度逆流が残存し、交連形成の追加などでは制御困難となった。このため左室側共通前尖に対し、心室中隔パッチおよび房室弁輪に沿って切開し、新鮮自己心膜片を用いた弁葉拡大を行った。僧帽弁*通過血流速度(E波)は1.9m/sで逆流は軽微で推移している。【考察】成人での僧帽弁形成の発展普及は小児例にも影響しているが、特異な形態の先天性心疾患例では特に形成術の意義は大きく、成人以上に種々の手技や組み合わせに精通し、適切な適用が必要となる。弁葉拡大は正常と異なる形態であっても弁尖接合面の増大から逆流制御に効果的に機能する。成長による形態の変化や自己心膜の性状の変化が長期予後に影響する可能性がある。中期経過では良好な弁機能が維持されているが、処理の要否や真の長期予後について経過観察を継続する。【まとめ】本術式は正常僧帽弁とは大きく形態の異なる房室中隔欠損小児例でも有用な自己組織による修復の選択肢となる。