18:00 〜 19:00
[I-P01-04] 二つのサルコメア遺伝子に変異を認め、孤立性右室流出路狭窄を呈した肥大型心筋症の一例
キーワード:肥大型心筋症, 右室流出路狭窄, double mutation
【背景】肥大型心筋症(HCM)の責任遺伝子には複数のサルコメア遺伝子が特定されているが、同じ変異を有していても発症の有無や表現型には差があり、そのgenotype-phenotype correlationは未知の部分が多い。また、右室流出路狭窄(RVOTO)単独のHCM症例は非常にまれで、遺伝学的解析がなされた報告はほとんどない。【症例】5歳男児。6か月健診の際に心雑音を聴取され、前医の心臓超音波検査で心室中隔の肥厚を認めた。11か月時にRVOTOを指摘されて当院に紹介され、心臓超音波検査で流速3.8 m/s(圧較差57 mmHg)のRVOTOを認めたが、左室流出路狭窄はなく、左室収縮能・拡張能はともに保持されていた。合併症や異常顔貌はなく、心疾患や突然死の家族歴もなかったが、次世代シークエンサーを用いたサルコメア遺伝子の全エクソン解析で、MYBPC3遺伝子の第13番エクソンにナンセンス変異(c.1156G>T, p.Glu386X)およびOBSCN遺伝子の第4番エクソンにフレームシフト変異(c.1386delG, p.Ala462fs)を認め、HCMと診断した。なお、検索可能であった本症例の母にはいずれの変異も認めなかった。1歳時よりpropranololの内服を開始し、現在まで無症状で経過している。【考察】本症例はHCMで最も変異の頻度が多いMYBPC3遺伝子に既報のpathogenic variantを認めて診断に至ったが、その表現型はHCMとしては非典型的であり、背景に別の要因の関与が疑われた。同時に変異を認めたOBSCN遺伝子は、単独で心筋症を呈することはまれであるが、HCMや拡張型心筋症との関連が指摘されており、本遺伝子のフレームシフト変異による機能喪失が本症例の病態を修飾した可能性がある。HCMにおけるdouble mutationの意義についてはまとまった報告がなく、今後の症例の蓄積が期待される。