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[I-S03-04] 減衰振動の運動方程式を適用した左心室拡張能 (Elastic recoil, Stiffness, Relaxation)の評価
キーワード:拡張能, 減衰振動, 心室圧
【背景】心室弛緩能評価に用いる時定数(ExponentialおよびLogistic, τE, τL) は容量依存性で、計測値に誤差を生じやすく、心筋のElastic recoilの影響は反映されにくい問題点がある。心室のStiffness評価は圧容積関係(ΔP/ΔV)で示されるが容積・心周期で変化し、心室の特性が表現されにくい。心室拡張能は複雑で多因子に影響を受けるため、合理的で再現性良く評価できる指標が望まれる。我々は心室圧を心筋細胞の伸縮に起因するElastic recoil/Stiffnessとアクチン・ミオシンのCross-bridgingによる心筋収縮を惹起する力とのバランスで形成されていると捉えて、等容性拡張期の心室圧波形 P(t)を減衰振動の運動方程式 d2P/dt2 + 1/μ dP/dt + Ek (P - P∞)= 0 (1/μ:減衰係数; Ek:ばね定数; P∞: asymptote)に適用した。EkはElastic recoilおよびwall stiffness, 1/μはcross-bridging関連のrelaxationを示すこととなる。【目的】減衰振動の運動方程式から算出されるEk(s-2), μ(ms)が左室拡張能を評価する有用な指標であることを検証する。【方法】心臓カテーテル検査を施行した70症例を対象とした。左室等容性拡張期の圧波形を上記運動方程式にfittingさせるためにLevenberg-Marquardt法を用いて、Ek, μを計測した。【結果】全症例でEkおよびμが評価可能であった。Ek = 882.9±112.7 s-2, μ = 29.8±8.3 msであり、τE, τLと有意な相関を認めた(r=0.46および0.58, P<0.0001)。P(t)とdP/dtの関連を示すPressure Phase Plane上で比較すると、Ekおよびμを用いた方程式曲線が、τE, τLよりも明らかに実測値に沿っており、本法が優位であることが検証された。さらに容量負荷を行ったところ、τE, τLに比較してμは容量負荷の影響が有意に低値であった(LVEDPに対して各々r=0.62, 0.31, 0.05)。【結語】減衰振動を適用した拡張能解析は心室容積の計測が不要で前負荷非依存性であり再現性の高い方法である。