第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

一般口演 28 (II-OR28)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 2

2017年7月8日(土) 09:20 〜 10:10 第5会場 (1F 展示イベントホール Room 5)

座長:松裏 裕行(東邦大学医学部 小児科学講座(大森))

09:20 〜 10:10

[II-OR28-05] 重症肺高血圧症に伴う両心不全に対し,本邦初のPotts Shuntを施行した1例からの学び

石垣 瑞彦1, 先崎 秀明4, 伊藤 弘毅3, 元野 憲作2, 濱本 奈央2, 大崎 真崎2, 金 成海1, 満下 紀恵1, 新居 正基1, 坂本 喜三郎3, 田中 靖彦1 (1.静岡県立こども病院 循環器科, 2.静岡県立こども病院 循環器集中治療科, 3.静岡県立こども病院 心臓血管外科, 4.埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器科)

キーワード:肺高血圧, Potts shunt, 周術期管理

背景】肺高血圧症(PH)に伴う進行性右心不全の救済療法として,Potts Shuntによる後負荷軽減療法が提唱され,海外を中心に少数例での有効性が報告されている.今回我々は,PHに伴う両心不全の13歳男児に対し,Pottsを施行した.病態,適応,管理につき示唆に富む症例であり報告する.症例】胎児診断で左心低形成を疑われたが,出生後は左室腔の増大を認め2心室循環が成立.遷延性のPHがありHOT施行.生後11か月頃よりMSR(ハンモック弁)が出現増悪し,1歳3か月でMVR(19mm)施行.その後もPHは進行し,2歳時の心カテRp=14RU・m2, 酸素負荷に反応せず.喀血があり実施した8歳時,フローラン適応評価カテにてPp/Ps=137/89=1.5, Rp=25RU・m2, PCW=16, LVEDP=18, フローラン負荷にてRp若干の低下あるものの肺血流増加に伴いEDP上昇し,フローラン適応なしと判断.右心と心室拡張連関軽減を目的とした内服治療で右心不全改善を示したが,再度増悪.弁の相対狭小化もあり,M弁再置換が望ましいが,PH,右心不全の状態は手術リスクが高いと判断,まずPottsで右心機能改善を目指す方針とした.術中のPH Crisis等の不測の事態に備え,肺血管床への最大限の配慮(NO使用,フローラン準備下)と,大腿動静脈からの補助循環下に12mmPotts Shuntを施行.Pottsは予想外にL-R Shunt(最大20mmHgの圧較差)となり,再弁置換(23mm)とShuntのBandingを追加し終了.術後約2か月時,Shuntは変動する両方向性を示したが,右室は減負荷されBNPは術前1200から87まで低下した.考察】重症肺高血圧症に伴う右心不全に対し,術前,術中の入念な準備によりPotts Shuntは安全に施行しうる.左心系疾患によるPHの肺動脈血管床への関与は評価が難しく,幅を持った術前予測による準備が必要である.また,術中の血行動態の変化,反応は,通常では評価困難な肺血管床の潜在機能に対する情報も提供し,術後の治療方向性にも重要な示唆を与えてくれる.