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[II-OR30-01] 心内膜繊維弾性組織切除術を行った重症大動脈弁狭窄症の2例
Keywords:心内膜繊維弾性症, 大動脈弁狭窄症, 拡張障害
【はじめに】重症大動脈弁狭窄症(cAS)に合併する心内膜繊維弾性症(EFE)は, 左室コンプライアンス低下から重症の拡張機能異常を引き起こす。Boston小児病院の報告では, EFE切除により二心室修復到達患者の増加など良好な成績が報告されているが, 他施設からの報告は少なく有用性には不明な点が多い。当院にて同手術を行ったcASの2例を報告する。【症例1】41週, 経膣分娩で出生。日齢4に心雑音で当院紹介。経皮的大動脈弁形成術を行うも改善乏しく, 日齢12にRoss-Konno手術を施行。術後EFEに伴う左室拡張障害から左房圧が30mmHgまで上昇し, 生後3ヶ月でEFE切除術を施行。術後7日程は経過良好であったが, 徐々に拡張障害が再燃。MRの増悪も認め, 生後4ヶ月でMVR及びEFE切除術を施行。一時的な拡張能の改善は得られたが, 同様に拡張障害が再燃。以後徐々に肺高血圧が進行, 両心不全となり, 気管切開を置き人工呼吸管理を継続したが8歳で死亡。【症例2】28週, 左室心尖部心室瘤を指摘され紹介。38週に帝王切開で出生。日齢2, 両側PAB, 日齢21, 心室瘤切除, 大動脈弁形成術を施行するも, 術後EFEに伴う左室拡張障害が顕在化。一時退院したが, 徐々に肺高血圧が進行, 1歳過ぎより両心不全に陥り, 1歳3ヶ月に大動脈弁形成, 僧帽弁形成, EFE切除術を施行。術後左室拡張能の改善を認めたが, 7日程で再び拡張障害が再燃。同術後1ヶ月で僧帽弁置換, EFE切除を追加したが, 同様の経過で再燃した。現在は気管切開待機中である。【結語】2例のみの経験ではあるが, EFE切除による左室拡張能の改善効果はいずれも一時的なものに留まり, 以降の経過は拘束型心筋症に類似した。また上昇した左房圧に起因する肺高血圧のため, 単心室修復への切り替えしも困難となった。EFEを伴った左室心筋の性状についてはバリエーションが広い可能性があり, 症例によっては切除効果が限定的であることを認識する必要がある。