第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

心筋心膜疾患

一般口演 30 (II-OR30)
心筋心膜疾患

2017年7月8日(土) 13:50 〜 14:40 第5会場 (1F 展示イベントホール Room 5)

座長:神山 浩(日本大学医学部 IR・医学教育センター)

13:50 〜 14:40

[II-OR30-03] 組織ドプラ法と2D speckle tracking法を用いた化学療法誘発性心筋障害についての検討

橋田 祐一郎, 坂田 晋史, 倉信 裕樹, 美野 陽一, 神崎 晋 (鳥取大学 医学部 周産期小児医学分野)

キーワード:化学療法誘発性心筋症, 組織ドプラ法, 2D speckle tracking法

抗癌剤治療後の心毒性はがん患者の長期予後に大きく影響し、早期発見と早期介入が重要である。近年、組織ドプラ法(TDI)や2D speckle tracking法(2DSTI)を用いた心機能評価が早期の心毒性の把握に有用とされている。【目的】TDIと2DSTIを用いて、心毒性のリスクが高い抗癌剤治療をうけた小児がん患者の心機能について検討する。【対象と方法】対象は、抗癌剤治療終了後1年以上経過した患者(P群):43例(男:20人,女:23人,年齢中央値:13.4±3.8歳)と器質的心疾患のない対照(N群):56例(男:35人,女:21人, 年齢中央値:12.3±2.6歳)。エコー装置はGE社製S6で、TDIを用いて僧房弁輪(中隔側と左室自由壁側)の拡張早期速度(e’)、収縮期速度(s)を測定した。また、STIを用いて左室のglobal radial strain(GRS)、global circumferential strain(GCS)、global longitudinal strain(GLS)を測定し、これら指標について両群間で比較検討した。【結果】両群間で、左室拡張末期径、左室駆出率(LVEF)、僧房弁口血流速度のE/Aに有意差はなかったが、中隔側と左室自由壁側のe’及び中隔側のsは、P群がN群と比較して有意に低値であった(中隔側e’:13.8±2.0cm/s vs 14.9±2.2cm/s、自由壁側e’:16.4±2.6cm/s vs 18.2±2.2cm/s、中隔側s:7.9±1.1cm/s vs 8.8±1.3cm/s、p<0.01)。GRSとGCSは、P群がN群と比較して有意に低値で(GRS:52.0±13.9% vs 65.1±11.7%、GCS:-18.4±2.8% vs -20.8±2.3%、p<0.01)、GLSは、有意差はないもののP群が低い傾向にあった(GLS:-17.7±1.6% vs 19.6±1.6%、p:0.054)。【結語】抗癌剤治療後の小児がん患者では潜在的な心機能障害の存在が示唆され、その早期発見にTDIや2DSTIが有用と思われた。