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[II-OR31-01] 器質的心疾患を伴わない小児期発症心房粗動の臨床的・遺伝学的特徴
キーワード:心房粗動, 洞不全症候群, SCN5A
【背景と目的】器質的心疾患を伴わない心房粗動(AFL)は小児においてまれである。その臨床的遺伝学的特徴を明らかにするため本研究を行った。【方法】2009年4月から2017年1月の間に当科で電気生理学的検査・アブレーションまたはペースメーカー治療(PMI)を行った、1歳以上18歳以下発症の器質的心疾患を伴わないAFL患者について、後方視的に臨床的特徴を調査した。【結果】患者は9名。男6例(67%)。AFL発症時期は中央値6.1(1.67-14.6)歳。臨床的な洞不全症候群(SSS)合併は6例(67%)で発症時期は中央値3.8(1.7-11.8)歳、12歳未満のAFL発症6名全例がSSSを合併していた。家族歴が得られた7例のうち、Brugada型心電図・SSS・拡張型心筋症などを4例に認めた。心電図学的には心室内伝導障害(QRS≧100ms)を7例(78%)に認めた。AFL発症前に1例が脳出血、1例は発達遅滞を認めていた。アブレーション治療は8例に施行され全例AFL軽快。経過観察期間中央値21(2~57)か月において、抗血小板剤内服のみで経過観察中であった1例に脳梗塞発症、SSS合併の1例に23歳時PMIが施行された。遺伝子検査は4例に施行され、うち3例に病原性SCN5Aバリアントが同定され(ナンセンス変異2例、コンパウンドミスセンス変異1例)、これらのAFL発症年齢は3.9歳と若齢であった。【考察と結論】乳児期以降に発症する器質的心疾患を伴わない小児の心房粗動は、特に若年者においては徐脈頻脈症候群の部分症として発症することが多く、家族歴を有するものが多く、遺伝学的背景の存在が示唆された。また心室内伝導障害も高率に合併しており、心房のみならず潜在的な心室刺激伝導系の異常も示唆された。機能異常が重度なSCN5A遺伝子変異によるものは、より若年発症である可能性が考えられた。