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[II-OR35-01] 小児補助循環治療後の遠隔成績
Keywords:補助循環, 小児心臓疾患, 脳神経障害
【背景】補助循環治療は小児心臓疾患領域の重症循環不全および呼吸不全において重要な役割を果たすが遠隔成績に関する報告は少ない。【目的】当院の補助循環治療例を後方視的に研究し、その遠隔成績について検討した。【方法】2003年8月~2016年7月までに当院にて補助循環治療を導入した小児70名のうち生存退院した35名(男性20名、女性10名)を追跡調査し、Kaplan-Meier法にて5年生存率を求めた。また、心機能、脳神経障害、呼吸器合併症の頻度を調べ遠隔期のQOLについて検討した。【結果】補助循環導入の月齢中央値は3.8か月(生後1日~6歳)、体重(中央値)は4.5kg、導入原因は低心拍出量症候群10例、院内急変対応(rescue ECLS)7例、術後心肺離脱困難6例、心筋炎 5例、その他7例であった。使用した補助循環はECMOが23例、VADが12例で平均駆動時間は161時間だった。退院後の追跡期間の中央値は6.9年(interquartile range:2,9-8.4年)、5年生存率は97%だった。1例が退院1年後に心不全で死亡したのみで残りの症例の心機能は保たれていた。しかし、脳神経障害後遺症を12例(34%)に認め、てんかん発作が5例で最多だった。また、1例は気管切開にて自宅管理中である。さらに無症候性の頭部画像異常を5名(11%)に認めた。脳神経障害合併のリスク因子は補助循環装着前の最高乳酸値(P=0.03)であった。【考察】われわれの小児補助循環の治療成績は生存退院率、退院後の生存予後も良好であった。しかし脳神経合併症が半数あり、QOLの低下が問題であった。補助循環装着前の乳酸値が高いほど脳合併症のリスクが高いことから、補助循環の適応を素早く決定し、低体温療法など脳保護の観点から補助循環前後の管理をきめ細かにすべきであると考えられた。