第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター

一般心臓病学

ポスター (II-P17)
一般心臓病学 1

2017年7月8日(土) 18:15 〜 19:15 ポスターエリア (1F 展示イベントホール)

座長:桑原 尚志(岐阜県総合医療センター小児科医療センター 小児循環器内科)

18:15 〜 19:15

[II-P17-05] 待機的に手術に至った乳児特発性僧帽弁腱索断裂の1例

鳥羽山 寿子1,2, 福永 英生1, 古川 岳史1, 大槻 将弘1, 高橋 健1, 秋元 かつみ1, 稀代 雅彦1, 中西 啓介3, 川崎 志保理3, 新島 新一1,2, 清水 俊明1 (1.順天堂大学医学部小児科, 2.順天堂大学医学部附属練馬病院 総合小児科, 3.順天堂大学医学部心臓血管外科)

キーワード:乳児特発性僧帽弁腱索断裂, 僧帽弁逆流症, 急性心不全

【背景】乳児特発性僧帽弁腱索断裂は、発症とともに心不全が進行し適切な内科管理と外科治療が行われないと生命の危険もある重篤な疾患である。急激に進行する症例が多い中で、内科的に急性期を管理したのち第30病日で手術に至り、予後が良好な症例を経験した。非典型的な自験例について過去の報告を参考に考察した。【症例】7か月男児。心雑音を指摘されたことは無い。膠原病の家族歴はない。発熱、嘔吐、経口哺乳不良を主訴に第2病日に近医を受診し、周囲の流行より感染性胃腸炎の診断で入院した。心尖部を最強点とする汎収縮期心雑音と多呼吸、全身浮腫、胸腹水を認め、心エコー検査で僧帽弁腱索(後尖)断裂による僧帽弁逆流と急性心不全と診断した。当院との綿密な連携のもと、利尿剤による抗心不全治療で呼吸循環状態は改善した。しかし、陥没呼吸が残存したため外科治療の適応と判断し、当院にて第30病日に僧帽弁縫縮術を施行した。利尿剤とエナラプリルを内服し、術後経過は良好である。【考察】自験例の発症月齢は全国調査とほぼ同じであり、また過去の症例では断裂部位や数は心不全の程度や予後に影響していなかった。一方、自験例では右心不全症状が主症状であったのに対し、過去の症例16例のうち発症同日の緊急手術を要した3例ではショック、皮膚蒼白といった左心不全症状あるいは両心不全症状が顕著であるものが多かった。本疾患は診断直後に緊急手術を要することもあるが、急速に進行する左心不全症状がなければ、内科的に心不全を管理し、栄養状態を改善させたうえで待機的に手術に臨むことができる可能性が示唆された。しかし予定手術を計画した場合でも、他部位の腱索が更に断裂した報告もあり、常に緊急手術に対応できるような施設で管理することが望ましいと考えられる。