第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター

一般心臓病学

ポスター (II-P18)
一般心臓病学 2

2017年7月8日(土) 18:15 〜 19:15 ポスターエリア (1F 展示イベントホール)

座長:犬飼 幸子(名古屋第二赤十字病院 小児科)

18:15 〜 19:15

[II-P18-01] 救命できた右鎖骨下動脈起始異常-食道瘻の1例

櫨木 大祐, 塩川 直宏, 関 俊二, 高橋 宣宏, 中江 広治, 中川 俊輔, 二宮 由美子, 上野 健太郎, 江口 太助, 河野 嘉文 (鹿児島大学病院 小児科)

キーワード:右鎖骨下動脈起始異常, 食道瘻, 胃管

【背景】 左大動脈弓・右鎖骨下動脈起始異常は、先天性の大動脈弓異常の中で頻度が高い。心内奇形を伴わない場合も多く、無症状で経過している例も多い。右鎖骨下動脈起始異常-食道瘻の報告は稀であり、突然の大量出血を伴うことから救命が難しいとされている。今回、経鼻胃管留置中に右鎖骨下動脈起始異常-食道瘻による出血性ショックを呈し、他科との連携で救命できた症例を経験したので報告する。
【症例】 5歳女児。診断は脳幹部腫瘍。既往歴に特記事項なし。4歳8か月時から歩行時のふらつきがあり、4歳10か月時にけいれん重積・呼吸停止を認め頭部CTで50mm大の脳幹部腫瘍と水頭症が判明した。脳幹部腫瘍に対する手術適応はなく、脳室-腹腔内シャントの造設と気管切開を行った。腫瘍に対してベバシズマブおよびテモゾロミドの投与と放射線治療を行ない、意識障害が遷延したため経鼻胃管による経管栄養を継続した。
4歳11か月時に突然の吐血があり、消化器内科での緊急上部消化管内視鏡検査で上部食道から動脈性の出血を確認した。検査中に約300mlの大量出血があり、低血圧性ショックに対してRBCポンピングで対処した。Sengstaken-Blakemoreチューブを食道内に挿入して一時的に圧迫止血し、造影CTで右鎖骨下動脈起始異常-食道瘻が出血源と同定した。直ちに放射線科による右鎖骨下動脈のコイル塞栓術を行い、止血した。以後は再出血なく経過した。
【考察とまとめ】 本例の右鎖骨下動脈は食道背側を走行、上部食道を背面から圧迫して食道内腔が隆起していた。同部位に胃管が接触し潰瘍化、最終的には瘻孔を形成して食道内へ動脈性の出血を来たしたと考えられた。小児では胃管の長期留置が出血の誘因となることが多いが、過去には留置期間9日でも発症した報告がある。単純CTでも右鎖骨下動脈起始異常は判別可能であり、胃管長期留置が予測される場合は右鎖骨下動脈起始異常の有無を確認する必要がある。