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[II-P27-04] 房室中隔欠損症術後遠隔期の左側房室弁逆流に対し左側房室弁置換術を施行した遺伝性出血性毛細血管拡張症の1成人例
キーワード:成人先天性心疾患, 弁置換術, 左側房室弁
【背景】遺伝性出血性毛細血管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia (HHT))は多発性動静脈奇形、毛細血管拡張、反復する鼻出血を伴う常染色体優性遺伝の疾患である。今回、房室中隔欠損症術後遠隔期に左側房室弁逆流による心房細動及び心不全症状を認め、精査の結果HHTが判明、肺動静脈シャントコイル塞栓後に左側房室弁置換術及びMAZE手術を施行したという稀な症例を経験したので報告する。【症例】42歳女性。6歳時に房室中隔欠損症に対し根治術施行。その後無投薬で通常の日常生活を送っていたが1年前より労作時呼吸苦を自覚。近医受診し心房細動も認めたため当院紹介受診となった。TTE上、左側房室弁弁輪部から全長にわたり認めるcleftからの重度弁逆流を認め、手術の方針となった。術前検査にて肺・肝に多発動静脈奇形(AVM)を認め、さらに口腔内の毛細血管拡張や頻繁な鼻出血の既往を認めたため、遺伝性出血性毛細血管拡張症の診断が追加された。脳合併症予防のため、肺動静脈瘻を経皮的にコイル塞栓した後に心臓手術を施行した。手術は左側房室弁置換術(27/29mm On-X機械弁)、MAZE手術及び左心耳切除術を施行した。最初に大腿動脈からの逆行性送血で人工心肺を確立したが、人工心肺開始直後に頭部INVOS値の著明な低下を認め、肝臓の多発AVMが原因で頭部に十分な血流が届いていないと判断し、直ちに大動脈からの順行性送血へと変更、さらに高流量とすることで次第にINVOS値の改善が見られた。左側房室弁尖は全体的に変性著明であり、術前診断通り弁輪部からのCleftを認めた。その他人工心肺離脱を含め問題なく手術を終了した。術後一過性の腎機能障害を認め、全身浮腫が遷延したもののその他洞調律で順調に経過し術後29日目に退院となった。【結語】HHT患者への先天性心疾患手術の報告はこれまでに報告されていない。HHT患者で多発AVMを伴う場合には慎重な人工心肺管理が必要であると考えられた。