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[II-P28-02] 絹フィブロインを基盤とした心臓血管修復手術用シート材の開発
キーワード:絹フィブロイン, 熱可塑性ポリウレタン, エレクトロスピニング
【背景・目的】小児心臓血管外科領域における各種拡大手術ではePTFEやグルタールアルデヒド処理牛心膜製シート材が現在汎用されている。しかしながらこれらは、変性・石灰化によって組織成長の妨げになる。さらにePTFEでは針穴出血が多く止血に難渋することや、牛心膜では安定した供給が得られないなどの問題点が挙げられる。これらの問題を克服するため、長期的な生分解性が期待されるシルクフィブロイン(SF)を原料とし、生体適合性のある熱可塑性ポリウレタン(PU)を混じ新たな心臓血管手術用シート材の開発を行っている。【方法】SFは蚕体内の絹糸腺から直接採取し、エタノール水溶液に浸漬することで得られる「液状シルク」を原料化した。液状シルクの精錬によって得られたSF及び熱可塑性PU(Pellethane®)を溶液化し混合した。この混合液をエレクトロスピニング(ES)法で射出し、厚さ100~500μmのマイクロファイバー不織物シート(SFPシート)を作製、各種物性を評価した。さらにラット腹部動脈、ビーグル成犬下行大動脈に本シートを埋植し、3ヶ月後に犠牲死させ肉眼的及び組織学的に評価した。【結果】ES法で作製したSFPシートはよく混合された繊維構造を形成し、相容状態となっていた。ePTFEと同等の物性を認め、血液漏れはePTFEより少量であった。シートの血液面表面は自己血管に連続して平滑で、薄い内膜が形成され狭窄や瘤化は無かった。シートの石灰化はなく、炎症は軽度であった。シート層内への細胞浸潤をわずかに認めたがシートの分解性は示唆されなかった。【考察・結語】SFを基盤とし合成高分子を配合することで既製品と同等の物性を有するシートの作製が可能であった。石灰化抑制が期待でき優れた止血能を有していたが、一方でシートの分解性に関しては更なる長期評価が必要である。