第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション 4 (II-PD4)
無脾症候群(治療困難症例の検討を含めて)

2017年7月8日(土) 08:30 〜 10:00 第1会場 (1F 展示イベントホール Room 1)

座長:先崎 秀明(埼玉医科大学総合医療センター小児循環器)
座長:山岸 正明(京都府立医科大学小児心臓血管外科)

08:30 〜 10:00

[II-PD4-03] 無脾症候群に対する外科治療成績の検討

山内 早苗1, 盤井 成光1, 富永 佑児1, 久呉 洋介1, 萱谷 太2, 高橋 邦彦2, 青木 寿明2, 川田 博昭1 (1.大阪府立母子保健総合医療センター 心臓血管外科, 2.大阪府立母子保健総合医療センター 小児循環器科)

キーワード:無脾症候群, 総肺静脈還流異常, 房室弁逆流

【目的】無脾症候群(RAI)の治療成績を検討し,死亡予測因子と問題点を抽出すること.
【対象と方法】対象は1987-2016年に出生し,当院で外科治療を行ったRAI 67例.胎児診断は40例(59.7 %)で,総肺静脈還流異常(TAPVC)合併 35(心外型25,心臓型10),肺動脈狭窄(PS) 39,肺動脈閉鎖(PA) 20,共通房室弁口(CAVC) 61,大動脈弁下狭窄(SAS) 5,両側SVC 33,消化管疾患合併 16例であった.これらの治療成績を検討した.
【結果】観察期間は中央値6.8年(最長29.1年).BDGに先行した手術は体肺動脈短絡 24,心室肺動脈導管 2,肺動脈絞扼 7,両側肺動脈絞扼 5例で,TAPVC修復を15例,房室弁形成を5例,DKSを1例に要した.BDG前にLOSで7例を失ったが,うち6例がTAPVC修復例であった.
58例がBDGに到達し,うち8例にTAPVC同時修復,6例に房室弁形成,2例にDKSを行い,2例にBDG後房室弁形成を追加した.残る2例はBDG待機中である.BDG後,敗血症で2例,LOSで1例,PVOで1例を失った.
48例がFontanに到達し,うち5例に房室弁形成,9例にDKSを行い,残る6例は待機中である.Fontan後,3例を心不全に伴う不整脈で失った.
全体の累積生存率は5年81.3 %,10年78.2 %,20年73.0 %であった.
単変量解析では心外型TAPVC合併例,BDG前TAPVC修復例,房室弁形成例で死亡率が高く,PS,PA,CAVC,両側SVC,SAS,消化管疾患の存在では差はなかった.Cox比例ハザード分析ではBDG前TAPVC修復例が死亡予測因子で,修復を要さない症例の累積生存率が5年89.5 %,10,20年85.6 %と比較的良好であるのに対し,要する症例は5, 10年53.3 %,15年26.7 %と不良であった(P<0.001, HR 0.156, 95% CI 0.054-0.452).
【まとめ】早期にTAPVC修復を要する症例の予後は不良であった.これ以外の症例の成績は概ね良好であるが,BDG到達以降も感染や心不全に対する注意が必要である.早期にTAPVC修復を要する症例の成績向上が今後の課題と考えられた.