The 53rd Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Symposium

Symposium 8 (II-S08)

Sat. Jul 8, 2017 4:30 PM - 6:00 PM ROOM 4 (Exhibition and Event Hall Room 4)

Chair:Shigetoyo Kogaki(大阪大学小児科)
Chair:Hiroyuki Yamagishi(慶應義塾大学小児科)

4:30 PM - 6:00 PM

[II-S08-04] Study of embryonic myocardium development using iPS cells derived from patients with left ventricular non-compaction cardiomyopathy.

Kazuki Kodo (Department of Pediatrics, Keio University School of Medicine, Tokyo, Japan)

Keywords:再生医療, TGFβ, 細胞増殖能

心筋緻密化は、肉柱形成、緻密層増殖および肉柱層リモデリングの各プロセスが、時間的・空間的に制御されることにより完成されるが、その詳細なメカニズムは未だ不明な点が多い。左室心筋緻密化障害(Left ventricular non-compaction: LVNC)の病因として、胎生期の左室心筋層の発生過程における緻密化の停止が考えられている。LVNCの発症機序の解明は心筋緻密化の分子制御機構の理解に有用であるが、ヒトの胎児組織を用いた研究は倫理的側面より現実的ではなく、本疾患の病因および病態生理は不明な点が多く残されている。今回我々は、ヒト心筋緻密化の分子機構を明らかにするため、心臓転写因子TBX20遺伝子に変異を有する複数のLVNC患者より疾患特異的iPS細胞を作成した。心筋分化誘導過程のiPS細胞由来心筋細胞(iPS cells-derived cardiomyocytes: iPSC-CMs)を解析したところ、心臓転写因子群の発現パターンは分化開始後2週間以内にピークを認めた。また分化誘導開始後2~3週にかけて、健常人由来のiPSC-CMsは細胞増殖能が保たれ、胎児心筋細胞の性質に類似していた。分化誘導開始2週間後のiPSC-CMsの細胞増殖能をLVNC患者と健常人由来のiPSC-CMsで比較したところ、LVNC患者由来iPSC-CMsでTGFβシグナル活性化に伴う増殖能低下が認められた。RNA-sequenceを用いた網羅的解析では、TBX20が多様なTGFβシグナル修飾因子の発現を心筋発生過程で制御する可能性が示唆された。TGFβシグナルの異常活性化は、in vitroで健常人由来iPSC-CMsの増殖を抑制し、またin vivoでTGFβシグナルの活性度依存性にマウス胎仔心筋緻密層の菲薄化を伴う発生障害が認められた。以上の結果より、胎生期の心筋におけるTGFβシグナル異常は、胎児心筋増殖を抑制し、緻密化を停止させることによりLVNCの発症に関与すると考えられた。本研究は心筋発生制御機構の解明において、疾患特異的iPSC-CMsが有用なツールとなる可能性を示すものである。