1:00 PM - 2:00 PM
[III-P36-08] 心膜液貯留・心膜心筋腫瘤性病変による心不全症状を契機に、白血病が判明したDown症候群の一例
Keywords:転移性心臓腫瘍, 白血病, アントラサイクリン
【はじめに】心膜液貯留・心膜心筋腫瘤性病変による心機能低下と心不全症状を契機に、白血病が判明したDown症候群の一例を報告する。【症例】10歳女児。顔面浮腫・労作時呼吸困難を主訴に受診。Down症候群で1歳、3歳時に白血病の既往があり、心毒性のあるアントラサイクリン薬 (総量75mg/m2) での化学療法歴があった。胸部レントゲンで心拡大と胸水貯留、心エコーで心膜液貯留を認め、心不全症状と確認された。血液検査で血球の異常や芽球の出現は認めず、CT精査でも上記所見のみであった。心膜炎を疑い、利尿剤・アスピリン・ステロイド内服で改善したが、ステロイド漸減と共に再増悪したため入院した。心エコーではEFは保持されていたが組織ドプラ でs’=3cm/sec, e’=3cm/secと著明な心収縮・拡張能低下と、心室中隔と左室心尖部と右室自由壁の一部心膜心筋輝度が亢進した腫瘤性病変を認めた。悪性腫瘍を疑い、骨髄検査で急性骨髄性白血病と診断された。ガリウムシンチグラフィで心臓への異常集積を認めた為、心膜心筋腫瘤性病変は白血病の心臓転移と確認された。心機能低下の存在よりアントラサイクリン薬を除いて化学療法を開始したところ、心膜液・心膜心筋腫瘤性病変は消失し、治療5か月目に組織ドプラでs’=13cm/sec, e’=18 cm/secと心機能も改善した。【考察】心膜液貯留の原因検索中に心膜心筋腫瘤性病変が表れ、悪性腫瘍を疑う契機となった。心臓腫瘤性病変の0.04-0.4%が白血病からの心臓転移であり、白血病による心臓腫瘤性病変は非常に稀である。転移性心臓腫瘍の約75%は心膜や心外膜に転移し心膜液を生じる。さらに白血病の心臓転移は心筋内浸潤もし、孤立性多発性小結節となり、不整脈や心不全を生じる場合がある。本症例ではアントラサイクリン薬を省くことで、心機能を悪化させずに治療継続できた。【結語】心膜液・心膜心筋腫瘤性病変の原因に、白血病の心臓転移が存在する可能性がある。