The 53rd Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Poster

術後遠隔期・合併症・発達

Poster (III-P38)

Sun. Jul 9, 2017 1:00 PM - 2:00 PM Poster Presentation Area (Exhibition and Event Hall)

Chair:Koichi Sagawa(Pediatric Cardiology Fukuoka Children's Hospital)

1:00 PM - 2:00 PM

[III-P38-01] 完全大血管転位症・大動脈スイッチ術後遠隔期における冠攣縮性狭心症の1例

柴田 映道, 安原 潤, 古道 一樹, 前田 潤, 福島 裕之, 山岸 敬幸 (慶應義塾大学医学部小児科)

Keywords:大動脈スイッチ術後, 冠攣縮性狭心症, 心筋梗塞

【はじめに】完全大血管転位症(TGA)に対する大動脈スイッチ術(ASO)後遠隔期に、冠動脈狭窄に伴う心血管イベントの発症が知られている。今回、胸痛により発症、検査所見より急性冠症候群(STEMI)と診断されたが、冠動脈造影により有意な狭窄病変を認めなかった症例を経験した。【症例】症例は19歳男性。日齢5にdTGA, VSD, PDAに対してASOおよびVSD, PDA閉鎖術が行われた。術後経過は良好で、年1回外来経過観察中。入院2か月前の定期検診時に実施した運動負荷検査で、虚血所見はなかった。入院前日の21時に自宅で飲酒後、安静時胸痛を自覚。入院当日朝も胸痛が改善しないため救急受診した。心電図上ST変化はなく、心エコーでも壁運動異常を認めなかったが、心筋逸脱酵素の上昇があり入院管理とした。入院当日の夜間にも胸痛があり、心電図でV3-V6のST上昇とIIIのT波陰転化を認め、ニトログリセリン舌下投与で改善した。心エコーで有意な壁運動異常を認めなかったが心筋逸脱酵素はさらに上昇し、STEMIの診断で緊急カテーテル・冠動脈造影(CAG)検査を行った。両側冠動脈の選択的造影で有意な狭窄は認められなかったが、LADにspasticな所見があり冠攣縮性狭心症と診断した。以降はカルシウム拮抗薬内服およびニトログリセリン貼布薬により症状の再燃を認めず、心筋逸脱酵素も正常化した。【考察】TGAに対するASO術後遠隔期の冠動脈狭窄の頻度は3-8%程度と報告により異なるが、その機序は移植冠動脈の器質的狭窄や奇異性内膜肥厚とされている。本例ではIVUS未実施ではあるが、CAGで有意な狭窄病変を認めなかったため、冠攣縮がSTEMIの原因と考えた。アルコール感受性の高いALDH2*2ヘテロ変異の遺伝子型では、飲酒が冠攣縮性狭心症のリスク因子であることが知られており、遺伝子検査を検討している。