第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター

成人先天性心疾患

ポスター (III-P39)
成人先天性心疾患 3

2017年7月9日(日) 13:00 〜 14:00 ポスターエリア (1F 展示イベントホール)

座長:立野 滋(千葉県循環器病センター 小児科)

13:00 〜 14:00

[III-P39-07] 成人で症候化した右肺動脈閉鎖症の一例

仁田 学, 菅野 晃靖, 小村 直弘, 清國 雅義, 中山 尚貴, 岩田 究, 高野 桂子, 山田 なお, 石上 友章, 田村 功一 (横浜市立大学医学部 循環器・腎臓内科学)

キーワード:片側性肺動脈閉鎖症, 成人, 肺血管拡張薬

【背景】片側性肺動脈欠損症は稀な先天奇形である。【症例】症例は59歳女性。56歳時に喀血と呼吸困難で前医を受診。右肺動脈閉鎖と肺動脈弁上部狭窄を指摘された。SpO2 90%(酸素3.0L/分)の低酸素血症があり、カテーテル検査では収縮期右室圧80mmHg、左肺動脈圧45/8(22)mmHg、大動脈圧108/66(86)mmHgで、狭窄部の圧較差35mmHg、右室/左室圧比(RVp/LVp)=0.74であった。肺血管拡張薬(アンブリセンタン)を投与後も、経時的な増悪があり、58歳時に当院を紹介となった。右左短絡を伴う卵円孔開存(PFO)もあり、外科的肺動脈形成術(自己心膜パッチ拡大)とPFO閉鎖術を行った。手術所見では右肺動脈は痕跡的に存在し、内腔は入口部から完全閉塞していた。術直後はRVp/LVp=0.5へ低下したが、右室圧が再上昇傾向となり、59歳時に成人先天性心疾患部門へ紹介となった。肺血管拡張薬2剤(アンブリセンタン+タダラフィル)投与下でのカテーテル検査で、肺動脈には26mmHgの圧較差を伴う狭窄病変を認めた。また左房のSaO2 82%と低下し、下大静脈・左肺動脈からの選択的コントラストエコーが何も陰性であったため、肺での換気/血流ミスマッチ(V/Q mismatch)に起因する低酸素血症と判断した。RVp/LVp=0.89と右室圧の上昇もあり、待機的に肺動脈バルーン拡張術を行ったが、痕跡的な右肺動脈方向に血管解離を生じるのみで、狭窄部の十分な拡張を得られなかった。肺血流増加はV/Q mismatchに起因する低酸素血症を増悪させる可能性があるため、肺動脈への再介入はせず、up-titlationされていた肺血管拡張剤を漸減し経過観察している。【結語】低酸素血症を有する症例で外科的・薬物的に肺血管拡張を図る場合には、低酸素血症の原因などを慎重に検討する必要がある。