第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスター (III-P40)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 2

2017年7月9日(日) 13:00 〜 14:00 ポスターエリア (1F 展示イベントホール)

座長:福島 裕之(慶應義塾大学医学部 小児科)

13:00 〜 14:00

[III-P40-07] 肺高血圧症(PH)をきたしtadalafilで治療した造血幹細胞移植(HSCT)後の3例

深澤 佳絵1, 早野 聡1, 沼口 敦2, 高橋 義行1, 加藤 太一1 (1.名古屋大学大学院 医学系研究科 小児科学, 2.名古屋大学医学部附属病院救急・内科系集中治療部)

キーワード:肺高血圧, 造血幹細胞移植, 特異的肺高血圧治療薬

【背景】HSCT後のPHは血管内皮障害により起こるとされ、予後不良である。特異的肺高血圧治療薬で治療した小児の症例報告は散見されるが、tadalafilを使用した報告はない。今回、HSCT後のPHに対しtadalafilで治療した3例を経験したので報告する。
【症例1】神経芽腫4期に対して2回のHSCTを行った5歳女児。2回目の移植後81日目に咳嗽とSpO2低下を認め、CTで両肺野の斑状陰影を指摘された。低酸素血症は改善したが、117日目に等圧のPHと診断、tadalafil,beraprostで治療した。PH治療開始後80日で肺動脈圧は正常化し、7か月後に漸減中止した。
【症例2】神経芽腫4期に対して2回のHSCTを行った3歳女児。2回目の移植後10日目よりSpO2低下を認め、CTで肺門部主体のびまん性すりガラス陰影と胸水を認めた。当初はPHを認めなかったが、呼吸不全の進行とともに21日目に等圧PHとなった。Tadalafil開始後40日で肺動脈圧は正常化し、治療を中止した。
【症例3】乳児ALLに対してHSCTを行った9か月女児。10日目より努力呼吸とSpO2低下あり、CTにてびまん性のすりガラス陰影と胸水を認めた。等圧PHに対して27日目より16日間のNO治療を行い、tadalafilに変更しPHは一旦改善した。しかし、57日目より再び呼吸状態が悪化し、Oversystemic PHとなったためNOを再開した。当初はNOに反応したが、敗血症の合併によりPHが増悪し、83日目に死亡した。
【考察】3例ともtadalafilに対して治療効果は得られたが、1例のみtadalafil治療中にPHの増悪が見られた。過去の症例報告でも、早期のPH発症は予後不良の傾向があり、発症時期による血管内皮障害の原因や病態の差が影響している可能性がある。また、死亡例の多くは診断・治療開始から1か月以内で急激な経過を辿っており、早期診断と積極的なPH治療が必要と思われる。
【結語】HSCT後のPHに対して、tadalafilは概ね有効であった。今後、病態の解明や血管内皮障害やPHに対する治療法の確立が待たれる。