第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム 12 (III-S12)
成人領域のチーム医療

2017年7月9日(日) 10:25 〜 11:55 第1会場 (1F 展示イベントホール Room 1)

座長:松尾 浩三(千葉県循環器病センター 成人先天性心疾患診療部)
座長:満下 紀恵(静岡県立こども病院循環器科)

10:25 〜 11:55

[III-S12-01] 成人領域のチーム医療 小児循環器科医の役割

満下 紀恵1, 田中 靖彦1, 芳本 潤1, 新居 正基1, 金 成海1, 佐藤 慶介1, 小野 安生2 (1.静岡県立こども病院 循環器科, 2.静岡県立総合病院 循環器科)

キーワード:成人先天性心疾患, チーム医療, 患者教育

小児循環器科医は、胎児期から発達成長していくという特性をもつ小児と先天性心疾患についての知識と経験は豊富であるが、成人期に特有の加齢が及ぼす循環器系をはじめとする身体への影響や生活習慣病、悪性腫瘍や他の臓器不全合併例の知識と経験は乏しい。成人先天性心疾患(ACHD)患者が増加していくなかで、小児循環器科医が患者を診続けることは、患者が20代30代の若年までであれば可能かもしれない。しかし、心疾患の遺残病変が経年的に悪化し、かつ生活習慣病や悪性腫瘍、腎不全肝不全などを合併している壮年期以降の患者を小児科ベースの医者が診ることは患者にとってよいことではない。また、時間的にも乳児で診た患者の壮年期を同じ医師やチームが診続けることは不可能である。 我々小児循環器科医は、先天性心疾患をもつ患者の多くが小児期だけでなく生涯のフォローが必要という認識のもと、患者がよりよく長くより良い人生をおくることができるために、正確な診断、適切な時期の治療介入、術後の遺残病変の管理を行うことは当然であるが、患者自身が診療環境が変わってもドロップアウトせず自身の疾患とともに歩むためには患者教育をすることが必須であろう。 成人領域のチーム医療の中心は、ACHD専門の循環器内科医がなるのが理想である。そのような循環器内科医が育ってきているとはいえ絶対数が少ない現状では、小児循環器科医が、患者を抱えるのでもなく、単なるコンサルタントになるのでもなく、チームの一員のコーディネーターとして関係各科部門間、患者と医療者間、次世代の医療者との間を橋渡しすることが必要だろう。当院では、患者教育目的に各部門を包括した成人移行外来を開設、また静岡県立総合病院循環器科と共同してACHD外来を開設し診療を行っている。症例に応じて両院スタッフで検討を行い、心臓カテーテル検査や手術、出産等も各科と相談し行っている。現状報告もあわせて検討したい。