The 53rd Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Symposium

Symposium 13 (III-S13)

Sun. Jul 9, 2017 8:30 AM - 10:00 AM ROOM 4 (Exhibition and Event Hall Room 4)

Chair:Hideaki Kado(福岡市立こども病院 心臓血管外科)
Chair:Satoshi Yasukochi(長野県立こども病院循環器小児科)

8:30 AM - 10:00 AM

[III-S13-01] 人を育てるのは最も難しい-アメリカの取り組みから学ぶもの-

佐野 俊二 (Division of Pediatric Cardiothoracic Surgery, University of California, San Francisco, USA)

論文を書くことよりも、良いチームを作ることは難しい。人を育てるのはもっと難しい。
私の恩師メルボルン小児病院(RCH)Mee先生の送別の言葉である。彼は辞めるまでに3人の世界を代表する小児心臓外科医を育てたいと言っていた。世界の英才が集まるRCHでどうして3人だけ?と思ったものである。辞める前に3人作ったと自慢された。ヨーロッパを代表するイギリス、バーミンガム小児病院のBrawn先生。テキサス小児病院のFraser教授、そして私もその中に入っているらしい。私は60歳前後になるまで人材育成を本当の意味で真剣に考えたことはなかったと思う。今、自分は何人の優秀な心臓外科医を育成したか?自問自答している。最後にもう1人優秀な小児心臓外科医を育てたい。それがUCSFで今でも現役を続けている理由でもある。
さて人材育成は日本だけでなく、アメリカでも深刻な問題である。心臓外科医のなり手が減少し、多くの施設の心臓外科研修医のポストは空いているのが現状である。特に小児心臓外科医の需要は少なく、希望する研修医も少ない。アメリカで小児心臓外科医になるには5-7年の一般外科、成人小児心臓を含む3年間の研修を終えたのち小児心臓外科をさらに学ばねばならない。そこで2007年よりアメリカ胸部外科学会ではボストン、フィラデルフィアやテキサスなどの各小児病院12の代表的施設での1年間の研修を義務づけた。連続する1年間に50例以上のノーウッドを含む症例の執刀をさせる事が施設に求められる。英才教育である。しかし10年を経て半数以上は職を得ることが出来ず、小児心臓外科から離れている。小児心臓外科は成績がはっきりしている分、成績の悪い施設は生き残れない。施設は自然淘汰され、研修医に手術をさせ合併症でもおこされると病院は多額の補償金を支払わねばならず、したがってスタッフがほとんどの手術をする。研修医には症例はなかなか回ってこない。いくら秀才といえども1-2年でノーウッド手術を最後まではさせてくれない。各施設は英才教育を受けた研修医が、手術ができないのを知っているので採用しない。