The 53rd Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Poster(multiple job category)

心理・プレパレーション

Poster(multiple job category)4 (III-TRP4)

Sun. Jul 9, 2017 1:00 PM - 1:25 PM Poster Presentation Area (Exhibition and Event Hall)

Chair:Kana Harada(Toho University Omori Medical Center)

1:00 PM - 1:25 PM

[III-TRP4-03] 重症な成人先天性心疾患患者の終末期の心理的支援―1事例の心理面接から

松尾 加奈, 大内 秀雄, 根岸 潤, 鍛冶 弘子, 白石 公 (国立循環器病研究センター)

Keywords:成人先天性心疾患, 終末期, 心理的支援

〔目的〕重症な成人先天性心疾患(ACHD)患者の終末期は、2、30代という本来なら将来に思いをはせる時期に入院を余儀なくされ、親よりも先に亡くなってしまうことを意識しなければならない。また、精神発達的にも未熟で親への依存もみられる。そのため、重症なACHD患者の終末期に特有のものがあると考える。今回、重症なACHD患者との心理面接過程を振り返り、重症なACHD患者の心理的側面からの理解を深め、どのような関りが必要なのかその支援について考える。〔方法〕20代男性、フォンタン術後患者。面接開始時は心疾患に加え多臓器機能低下により長期入院していた。X年8月~X+1年11月に週1回約50分臨床心理士による面接を実施した。その面接記録を振り返り検討する。本事例を発表するにあたり、ご家族に了承を得て個人の特定ができないようプライバシー保護に配慮した。〔結果〕面接は一般的な心理面接のように自身の気持ちに向き合うことは難しく、ゲームや好きなテレビの話で終わる回もあったが、心理士は語ることを無理強いせず、継続して毎週面接することでいつでも話せる場を保とうとした。小児期に友達と普通に遊んだ楽しい日々を生き生きと語る一方で、成人期に入院が増えた現状を「仕方がない」と冷静に受け止めながらも「外泊だけでも」と訴えていた。病態が急変し集中治療室に移った際には、「死」を受け入れたくない強い思いや、延命処置について家族の希望と異なることへの葛藤が語られた。その後はいつまた急変するか分からない恐怖心を抱え、自身の葬式の話しや家族への思いがたびたび語られ、心理士はどうすることもできないもどかしさを感じた。〔考察〕重症なACHD患者の終末期に寄り添うことで、患者自身の「死」への受け止め方、家族との関係などが見えてくる一方で、抱えているもどかしさも感じられた。関わっている医療者が情報だけでなく感情の共有をすることが心理的支援につながると考えた。