[I-DJK-02] 女性医師の活躍を支援する富山大学の試み
キーワード:院内保育, 病児保育, ロールモデル
若い世代の女性医師がそのキャリアを磨く時期は、同時に子どもを産み育てる大切な時期でもある。この2つの大事な仕事をかけ持っている女性医師のため、院内保育や病児保育などの環境整備を始めとし、子育てとキャリアアップの両立を支援していくことは重要な課題である。富山大学では、2007年に、文科省「周産期医療整備事業」の助成を受け、総合的周産期医療人育成プログラムを展開し、その一環として、女性医師の役割を重視し、女性医師支援を進めた。2007年には、院内保育を開設し、続いて2009年には女性医師支援室の設置とともに、当大学の特徴である休日および夜間のベビーシッタープーリングシステムを開始し、時間外の勤務にも対応できる体制を構築した。さらに2010年には、病児・病後児保育室を開設し、女性医師が安心して働き続ける環境を整えた。一方、各診療科では、病棟勤務をチーム制あるいは複数主治医制とし、夜間・休日を完全当直体制とし、勤務体制を整えた。これらの職場環境整備後、出産後の女性医師の離職を食い止め、職場復帰率はほぼ100%となり、人手不足で危機的状況であった富山県内の周産期医療体制を改善することができた。富山県内の新生児専任医の半数以上は女性医師で、小児科の中でも肉体的、精神的にハードである新生児医療においても、環境が整えば子育て中の女性医師も貢献できることが実証された。また、若い女性医師たちが中心となり、産休育休に関する独自のルールを作り、少し年上のロールモデルに従って順調に復帰し、キャリアアップを目指している。女性医師が働き続けることは、男性医師の日直などを軽減し男女ともに労働環境を改善し、医療安全にも繋がる。また、勤務医の偏在化により、慢性的な医師不足に陥っている地方では、女性医師の勤務推進が重要な解決策につながる可能性がある。