第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ミニオーラルセッション

術後遠隔期・合併症・発達

ミニオーラルセッション01(I-MOR01)
術後遠隔期・合併症・発達 1

2018年7月5日(木) 10:00 〜 10:35 ミニオーラル 第1会場 (311)

座長:桑原 尚志(岐阜県総合医療センター 小児循環器内科)

[I-MOR01-02] 小児先天性心疾患術後の急性腎障害(Acute Kidney Injury)は、小児慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease)の危険因子となりうるか。

上野 健太郎1, 下園 翼1, 塩川 直宏1, 高橋 宜宏1, 中江 広治1, 森田 康子1, 櫨木 大祐1, 松葉 智之2, 井本 浩2 (1.鹿児島大学病院小児診療センター, 2.鹿児島大学病院心臓血管外科・消化器外科)

キーワード:慢性腎障害, 高血圧, 急性腎障害

【背景】心臓と腎臓は、お互いにクロストークすることで生体の恒常性維持に働いており、「心腎連関」と呼ばれている。術後の急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)は、循環補助、体液管理、腎代替療法等を必要とし、時に致命的な経過をたどることがある。さらに成人では術後AKIの約20%以上が慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)へ移行すると考えられている。【目的】乳児期に開心術を必要とした先天性心疾患患児を対象に術後AKIとCKDの関連性を評価し、CKDのリスク因子について検討する。【方法】乳児期に開心術を行った145例のうち、成人と同等の糸球体濾過量(GFR)になる2-2.5歳時に血液標本が得られた55例を対象とした。術後AKIはKDIGO基準を用い、CKDは日本小児科学会、日本小児腎臓病学会が提唱するGFR<90 mL/min/1.73m2と定義した。先天性心疾患の重症度はRACHS-1 scoreを用いた。患者背景では染色体異常・チアノーゼ性心疾患・Fontan循環の有無、術後の内服薬(利尿薬、ACE阻害薬、β-blocker、肺血管拡張薬)の使用を確認し、CKDとの関連性を解析した。【結果】55例中21例(38.2%)が術後AKIを合併しており、20例(36.3%)が2歳時にCKDの定義を満たした。CKD群は全例CKD stage2であった。術後AKI群と術後非AKI群でCKD発症に差はみられなかった(P=0.834)。染色体異常あり(OR 13.3、P<0.001)とFontan循環(OR 11.2、P=0.002)が、有意なCKDリスク因子であった。2歳時の内服薬の使用の有無とCKDの合併に関連性なかった。CKD群で高血圧の定義を満たしたのは2例であった。【考案・結語】術後AKIは、CKD合併のリスク因子にならなかった。染色体異常合併例やFontan患者では、幼児期早期にCKDを合併するリスクが高いため、高血圧症、成長障害、心血管系障害やミネラル代謝異常など重篤な合併症に留意する必要がある。