The 54th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ミニオーラルセッション

集中治療・周術期管理

ミニオーラルセッション05(I-MOR05)
集中治療・周術期管理

Thu. Jul 5, 2018 10:00 AM - 10:35 AM ミニオーラル 第3会場 (313)

座長:長嶋 光樹(和歌山県立医大病院 第一外科)

[I-MOR05-02] 心臓手術後急性期に合併する急性壊死性脳症

正本 雅斗1, 青木 晴香1, 中野 裕介1, 渡辺 重朗1, 鉾碕 竜範1, 町田 大輔2, 磯松 幸尚2, 益田 宗孝2, 岩本 眞理3 (1.横浜市立大学附属病院 小児循環器科, 2.横浜市立大学附属病院 心臓血管外科, 3.済生会横浜市東部病院 こどもセンター)

Keywords:急性壊死性脳症, 高サイトカイン血症, 術後合併症

【背景】心臓手術後の合併症として脳症の報告は少ない。【症例】症例1:1歳10ヶ月女児。Down症候群、両大血管右室起始症の診断。肺動脈絞扼術を経て心内修復術を施行した。術後9日目に発熱、意識レベル低下、血液検査で組織逸脱酵素の急上昇があり、頭部MRIで両側小脳、基底核にDWIで高信号の領域を認め急性壊死性脳症の診断に至った。症例2:2歳3ヶ月男児。完全型房室中隔欠損症の診断。生後2ヶ月で心内修復術を施行したが術後も僧帽弁逆流が高度に残存したため、僧帽弁置換術を施行した。完全房室ブロックを合併し、術後7日目に永久ペースメーカー植込み術を施行、術後16日目に発熱、意識障害、けいれんがあり、血液検査で組織逸脱酵素の急上昇、頭部CTで強い脳浮腫を認めたことから急性壊死性脳症と診断した。髄液PCRでHHV-7が検出された。両症例とも心筋炎をはじめとする多臓器不全、DICも合併し治療に難渋した。ステロイドパルス療法、免疫抑制療法(シクロスポリン)、大量ガンマグロブリン療法を施行、救命はしたものの重篤な神経学的後遺症を残した。【考察】開心術周術期では補助循環離脱直後より炎症性サイトカインが、次いで抗炎症性サイトカインの誘導が起こり、結果として術後3-10日では抗炎症性サイトカインが有意な状態となるため免疫機能は最も低下かつ不安定になると言われている。この時期の感染等が引き金となり高サイトカイン血症を発症、脳、心臓をはじめとする全身臓器が障害されるものと推測される。急性壊死性脳症は元々致命率が高いが、術後間もない循環呼吸が脆弱な全身状態では急激に致死的経過を辿ることが予測される。脳出血、脳梗塞、離脱症候群などとの鑑別も含め早期に診断し、脳症としての治療を遅滞なく行うことが重要である。心臓術後急性期の重篤な合併症である急性壊死性脳症は「原因不明の急変」による術後急性期死亡の一角を占めるのかもしれない。症例の蓄積と検討が望まれる。