[I-OR01-03] 総肺静脈還流異常症術後の吻合部における超音波ドップラー波形の評価
キーワード:総肺静脈還流異常症, 超音波ドップラー, 吻合部狭窄
【背景】正常の肺静脈波形は、収縮期(s波)と拡張期(d波)の順行波と逆行性のa波で構成される相動波である。肺静脈狭窄は順行性血流の流速増加や相動性の消失といった特徴がみられる。総肺静脈還流異常症(TAPVR)術後の吻合部再狭窄においてこれらと同様の特徴がみられるが、術直後は相動性血流を示す例もあり、そのリスク評価が困難な例も存在する。【目的】TAPVRに対する術後早期に将来的な再狭窄を予測する所見を抽出すること。【方法】2014年3月から2017年12月までに診断した単心室2例を含むTAPVR12(男性6)例に対して施行した外科治療13件について、術後28日以内に吻合部血流を超音波ドップラーで測定し将来的な再介入を示唆する所見について後方視的検討を行った。【結果】初回手術時日齢および術後エコー評価時日齢はそれぞれ10.5(0-155)、19(3-163)日であった。再介入となった(R)群は2件、再介入を要さなかった(N)群は11件であった。再介入は形態的狭窄および臨床症状により決定し、初回介入から再介入までの期間はそれぞれ109、114日であった。N群の観察期間は1101(26-1242)日であった。術後のドップラー所見では、最高流速(R群 1.81±0.35 vs. N群 1.09±0.26 m/s, p=0.20)、 最低/最高流速比(R群 0.69±0.04 vs. N群 0.44±0.18, p=0.41)に差を認めなかった。R群、N群はいずれも術後28日以内の吻合部血流は相動性であったが、N群では9例(82%)にa波を認めた(p<0.01)。【考察】術後28日以内にa波の消失を認めた4例中2例が吻合部狭窄を認め再介入となり、a波が確認できた9例では観察期間中に全例再介入を要さなかった。a波の消失はTAPVR術後の吻合部狭窄の早期マーカーとして有用な可能性がある。