[I-OR21-04] 生検で診断された心筋厚が13 mm未満の肥大型心筋症2例
Keywords:肥大型心筋症, 学校心臓検診, 生検
【背景】 小児における肥大型心筋症の診断基準は確立されていない。欧州心臓病学会は小児の診断基準として+2SD以上の心筋壁肥厚を挙げているが、10万人に2.9人という肥大型心筋症の頻度を考慮すると、この基準は過剰診断であると推測される。このことから、一般的に第一度近親者の基準である「心筋壁13mm以上の肥厚」を用いて診断がなされている。私たちは今回この基準を満たさない、心電図異常のみを来した肥大型心筋症の2例を経験した。【症例 1】 16歳男性、生来健康で心疾患の家族歴は無い。サッカーの最中に心肺停止しAEDで蘇生、当科に紹介された。1年生の学校心臓検診時の心電図で右室肥大の所見があったが、心臓超音波検査では壁肥厚などの異常を認めず、正常と判断された。中学1年時も同様の所見を認めたが、精査はされなかった。当科入院時の左室壁は11mmであったが、心肺停止の既往から肥大型心筋症が疑われた。心筋生検と遺伝子検査の結果、肥大型心筋症と診断された。【症例 2】 12歳男性、生来健康で心疾患の家族歴は無い。中学1年時の学校心臓検診で、異常Q波を指摘され当科を紹介受診した。小学校1年時の学校心臓検診で異常Q波を認めていたが、心臓超音波検査で左室心筋壁は6.3 mmであり、その他異常所見を認めなかったため経過観察とされていた。当科初診時、左室心筋壁は8.6 mmであったが、12か月後に著明なST-T変化と、左室心筋壁が11.9 mmと肥大を認めたため、心筋生検を施行した。所見は肥大型心筋症に矛盾しないものだった。【結論】肥大型心筋症において、心臓超音波による肥大所見は心電図変化より遅れて生じることが多いため、心電図の異常所見は定期的に経過観察することが重要である。また突然死の予防のためにも、小児における肥大型心筋症の心電図によるスクリーニング基準と、心臓超音波検査による診断基準の作成が急務である。