[I-OR21-05] 重度の閉塞性肥大型心筋症を合併したLEOPARD症候群に対するシロリムスの使用経験とT1 mappingを用いた心臓MRI評価
キーワード:LEOPARD症候群, シロリムス, T1 mapping
LEOPARD症候群(LS)における心合併症は肺動脈狭窄や肥大型心筋症(HCM)の頻度が高い。HCMは閉塞性肥大型心筋症(HOCM)となることがあり、多くの場合薬剤療法は無効である。LSモデルマウスを用いた実験ではHCMに対するシロリムスの有効性が報告されているが実臨床での使用報告は殆どない。また近年T1 mappingを用いた心臓MRIにより心筋疾患の線維化の定量評価が可能となった。今回我々はHOCM合併したLSに対してシロリムスを使用し、またT1 mappingを用いた心臓MRIを行う機会を得たので報告する。【症例】19歳男性。生後間もなくHOCMと診断された。表現型よりNoonan症候群が疑われていたが7歳頃から黒子が多発し、遺伝子検査を施行したところPTPN11に既報の遺伝子変異が確認されLSと診断された。HOCMに対する治療としてβブロッカーの内服を行っていたが効果はなく、左室中隔壁厚 (IVSTd)15.6mm, 左室後壁厚 (LVPWTd) 17.2mm, 左室流出路圧較差 (LVOTPG)は150mmHg、BNP値は2000pg/ml前後で推移していた。19歳のときにシロリムス1mg/dayの内服を開始し、治療中の血中濃度は6ng/mlと有効域にあったが内服開始後27週目のIVSTd, LVPWTd, LVOT PGは治療開始前と変化はなく、BNP値も横ばいであった。一方で心臓MRIでは遅延造影所見は増悪しており、T1 mappingでもびまん性にT1値の上昇を認めた。有害事象として口内炎を確認したがそれ以外は特に認められなかった。【考案】HOCMを合併したLSに対してシロリムスを使用し効果は確認できなかったが、HOCMの診断から19年が経過しておりリモデリングが高度であった可能性がある。より早期からシロリムスを用いていたなら結果は異なっていたかもしれない。またエコー所見やBNP値で変化がない場合でもMRI所見の増悪を認めることがあり、早期の心筋の線維化評価に有用となる可能性が示唆された。