[I-PD02-03] 胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的抗不整脈薬投与に関する臨床試験:多施設共同前向き介入試験
キーワード:胎児頻脈性不整脈, 経胎盤的治療, 臨床試験
【背景】胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的治療の有効性に関してはコンセンサスが得られているが、標準治療プロトコールは未だ確立していない。【目的】胎児頻脈性不整脈に対するプロトコール治療の有効性と安全性を検証すること。【方法】2010年10月から2017年1月までに国内15施設において、胎児頻脈性不整脈50例を前向きに登録した。上室性頻脈(SVT)又は心房粗動(AFL)、心室拍数180 bpm以上が持続、37週未満の単胎症例を対象として、プロトコール治療を行った。経胎盤治療には、ジゴキシン、ソタロール、フレカイニドを用いた。胎児頻脈性不整脈の消失を主要評価項目とした。【結果】妊娠30.4±3.2週で、SVT shortVA(n=17)、SVT longVA(n=4)及びAFL(n=29)が登録された。母体の有害事象は43/50(86.0%)で観察されたが、いずれも軽微であり治療の継続が可能であった。脱落した1例を除く49例において、胎児頻脈性不整脈の消失は41/49(83.7%)で認められ、胎児水腫がない場合は39/44(88.6%)、ある場合は2/5(40.0%)であった。胎児に高度房室ブロックを1例、AFL 1:1伝導を1例で認めた。胎児死亡例は2例で、コステロ症候群が疑われた重症胎児水腫を伴うAFL、及び胎児水腫の進行を伴うSVT shortVAであった。分娩週数は37.0±1.9週で、早産は8/47(17.0%)であった。新生児頻脈性不整脈は17/47(36.2%)に認められた。【考察】プロトコール治療の有効率は84%と高かったが、胎児水腫を伴う場合には40%であり、今後の課題と考えられた。母体の有害事象は高頻度だが軽微である一方で、胎児では低頻度だが重篤なものが含まれていた。また、特にSVTで出生後の再発率が高く、胎児治療が有効な場合でも注意を要すると考えられた。【結論】胎児頻脈性不整脈に対するプロトコール治療は80%以上で有効であった。胎児の重篤な有害事象及び出生後の頻脈性不整脈の再発に注意する必要がある。