[I-PD02-05] 大動脈縮窄症例に対する母体酸素投与による胎児治療
キーワード:母体酸素投与, 胎児大動脈縮窄症, 胎児左心低形成
【背景】解剖学的に有意な狭窄病変を有さない胎児左心低形成に対し、母体酸素投与により胎児左心系の発育が得られることが報告されている。今回我々は大動脈縮窄の胎児に対して母体酸素投与を行った2例を経験したので報告する。【症例1】在胎21週で左室の低形成、大動脈縮窄および左上大静脈遺残(PLSVC)を認めた。36週から38週まで1日10時間の母体酸素投与を施行し、42週0日に帝王切開で分娩。isthmus径 2.2mmで血流は逆行性で、lipo PGE1製剤投与し観察した。isthmus血流は順行性となったが径は2.6mmと不十分であり、日齢20に大動脈修復術を施行。術後経過良好である。isthmus径のz-scoreは、母体酸素投与前値-2.9であり、母体酸素投与によって-1.7まで改善したが、終了後には-3.2へ戻り、出生時は-5.5、日齢7の時点でも-4.5であった。【症例2】在胎28週で大動脈縮窄を指摘、35週から37週まで1日12時間の母体酸素投与を施行。39週0日に正常経膣分娩で出生し、isthmus は3.2mmであった。生後はlipo PGE1製剤を使用したが、循環保たれることを確認して漸減中止した。日齢1に動脈管閉鎖したが循環は保たれた。日齢8に退院し、現在外来観察中である。isthmus径のz-scoreは、母体酸素投与前には-3.8であったが、母体酸素投与によって-2.5まで改善し終了後も-2.6と保たれていた。出生時は-2.9、日齢7の時点で-3.2であった。【考察】母体への酸素投与で胎児左心系への血流が増加し左心系の発育が報告されている。症例1はPLSVCの合併が手術介入を回避できなかった要因の一つとして考えられる。また、症例2では酸素投与時間を症例1よりも長くし、治療週数も35週から37週と早期であったことが治療効果を得られた要因として考えられた。酸素投与による母体への副作用、および児への副作用は認めなかった。【結語】母体酸素投与は左心系の低形成を呈する胎児に対して、将来の二心室循環確立および外科的介入回避の点で有効である。