[I-S03-02] 奇異性脳塞栓をきたした心房間短絡患者に対するカテーテルインターベンション
キーワード:成人先天性心疾患, カテーテル閉鎖, 卵円孔開存
卵円孔は胎児循環に必須の心内構造であるが,多くは生後数日から数か月以内に機能的に閉鎖する.しかし卵円孔周囲の一次中隔と二次中隔が完全に癒合しない場合,フラップ状の一方向弁の形態となり,咳,深呼吸,運動時のいきみなど,右房への流入血が増大したり右房圧が左房圧を越えたりした場合に右左短絡を生ずるようになる.このような状態を卵円孔開存(patent foramen ovale: PFO)と呼び,一般健常成人の約15~25%に認めると報告されている.下肢や骨盤内に発生した静脈血栓がPFOを通過して脳血管床の血栓塞栓をきたすと奇異性脳梗塞を発症する.奇異性脳梗塞は脳梗塞の5~10%を占めると言われている.これまでの研究で55歳以下の奇異性塞栓症患者群は同年齢の非脳梗塞群より有意にPFOの頻度が高いことが報告されていた. 一方,卵円孔開存は経皮的にカテーテル閉鎖が可能な心疾患であり,国際的には多数例の治療実績があるが,これまでRCTで有効性が証明されたことはなかった.ところが本年9月に欧米で施行された独立した3つRCTで,経カテーテルPFO閉鎖術が抗血小板療法を主体とする薬物療法に比べ有意に脳梗塞再発を予防することが証明された.これまで奇異性脳塞栓再発予防には有効性はおろか禁忌に近い評価をされていた本治療が,今後は第一選択の治療法となる可能性さえ出てきた.奇異性脳塞栓を発症に心房間短絡を認めた成人症例に対するカテーテル閉鎖術を供覧する。